商標とは何か
商標とは、いわゆるトレードマークであり、自己の業務に係る商品又はサービス(役務)について使用する標章(マーク)であって、文字、図形、記号、立体的形状やその結合、又はこれらと色彩との結合によって構成されるものです。
日常生活においてあちらこちらでみかける商品の名前やマーク、又は銀行、鉄道会社、ホテル、レストランなどが提供する無形のサービスについて使用される名前やマークなどであって、他人の同種の商品又はサービスと区別するための識別標識(目印)として使用されるものです。特に、サービスについて使用する商標をサービスマークともいいます。
商標は知的財産です
知的財産(Intellectual Property)とは、無体財産とも呼ばれ、人間の知的創作活動によって生み出された技術やアイデアなどの経済的価値を有する無形の産物です。知的財産は、土地、家屋、金品といった他の財産と同様に、それを独占排他的に支配する権利、すなわち、知的財産権(Intellectual Property Rights)によって保護されます。これにより、他人の模倣を排除し、自ら生み出した技術等を独占的に実施・使用することができます。 知的財産権には、特許権、実用新案件、意匠権、商標権(以上をまとめて工業所有権と呼びます。)や、著作権、商号権、営業秘密等の権利があります。
知的財産を巡るトラブルが新聞紙上を賑わせている今日、経済取引を行う上で、知的財産権の適切な保護が非常に重要になっています。中でも、自己の商品・サービスのアイデンティティーを表示する商標(トレードマーク)は、企業サイドからすれば、自己の商品・サービスを市場に浸透させ、一定の品質(質)を維持し続けることにより顧客満足を獲得し、商品・サービスに関する信用を増大せしめるための有力な武器となります。商標は、その把握の容易性によって、直接に消費者にアピールする力をもっていることから、「声なき商人」(silent salesman)とも言われます。
このように、企業活動の第一線で活躍する商標は、「企業の顔」ともいうべき高い価値を有するものです。 なお、商標権は、他の工業所有権と異なり、更新によって半永久的に権利を存続させることが可能です。
日本の商標制度
日本においては、商標権は、特許庁での設定登録に基づいて発生する登録主義を採用しています。米国等のように、使用の事実に基づいて権利が発生する使用主義とは大きく異なります。我が国で商標権を取得するためには、特許庁に対して商標登録出願を行わなければなりません。ただし、未登録の商標でも、不正競争の目的でない使用によって周知著名となった場合には、すでに発生している商標に化体した業務上の信用を保護するための規定があります。
出願後、特許庁の審査官による登録要件についての厳しい審査が行われ、拒絶すべき理由が無い場合に、登録手続へと進みます。権利の存続期間は、原則、登録日から10年間であり、存続期間は更新が可能です。
商標権の性質と応用
- 専用権…登録された商標について、登録された指定商品・役務の範囲について、独占的に使用することができます。
- 禁止権…他人が、登録商標に類似する商標を、指定商品・役務に類似する商品・役務に使用等することを禁止することができます。
商標権者は、禁止権の範囲においては他人の使用を排除することができるのみで、法的に使用をすることが認められているわけではありません。商標は、他の財産同様、私的な財産であり、公共の利益に反しない限り、自由に処分することができます。商標権者自ら使用し市場におけるプレゼンスを拡大させることはもちろんのこと、使用許諾制度の下で、使用権(ライセンス)を設定して他人に使用させることや、商標権の全部又は一部を他人に譲渡するなどして、収益を得るなどの活用方法もあります。
ただし、産業政策的、公益的見地から、あるいは他人の権利、利益との関係から妥当でない場合には、商標権の効力が制限される場合があります。例えば、他人に専用使用権を設定した場合には設定範囲においては、商標権者といえども、登録商標の使用をすることができません。また、他人が自己の氏名や普通名称等を普通に用いられる方法で表示する商標には、商標権の効力は及びません。真正商品の並行輸入に対しても商標権の効力は及ばないとされています。その他、商標法では、商標権の効力につい様々な制限を設けています。