「山の名前」は商標登録できるのか?|お知らせ|オンダ国際特許事務所

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「山の名前」は商標登録できるのか?

ある山の別称からなる登録商標の権利者が、同名の日本酒を販売する酒造会社に対して商標権侵害を主張したところ、その経緯がSNSを通じて明らかになり、一部のインターネットユーザーから、商標権者に対して批判的な反応が示されるという事件がありました。

批判の趣旨は、概ね「山(及びその別称)を商標登録して独占するとはけしからん」というものであり、非常に感情的なものであったところが印象的でした。

それでは、日本において山の名前は商標登録できないのかというと、全く認められない、というわけではありません。商標登録を受けようとする商品・役務との関係で、山の名前が商品の産地・販売地と認識されたり、役務の提供の地と認識されたりする場合は登録を拒絶されることがありますが、現実には、世間一般で思われるよりも多くの商標が登録を認められているのではないかと考えます。

たとえば、「日本の『山の名前』検索数、年間ベスト10」に挙げられた山の名前の商標登録状況は次の通りです(2023年9月12日時点のJ-PlatPatにおけるデータに基づくものです)。

順位 山の名前 登録件数
1位 富士山 7件
2位 伊吹山 1件
3位 立山 8件
4位 高尾山 1件
5位 鋸山
6位 大雪山 3件
7位 比叡山 1件
8位 身延山
9位 旭岳
10位 月山 4件

※「日本の「山の名前」検索数、年間ベスト10を発表。初心者でも登りやすく絶景な山々がランクイン!~「山の日」関連調査~」の記事に基づき弊所作成https://blog.hankyu-travel.com/newsrelease/2017/08/mountain-ranking.php

この結果を見ますと、日本人にとって最も馴染みの深い「富士山」でさえ商標登録が可能であることがわかります。また、7件もの商標が登録されていることを考えますと、特許庁の判断に誤りがあったとはいえないと思います。なお、構成中に「富士山」の文字を含む登録商標まで抽出対象を広げますと、その数は400件を超えます。

話題になった商標権侵害事件についてはそれぞれの事情があることと思います。しかし、このような商標登録の実態を踏まえるなら、山の名前はもちろんのこと、山の別称であっても、それが商標登録されること自体については、特段に違和感も不自然さもないといえます。