2022.12.27
中国商標出願における商品・役務選択の注意点
指定商品・指定役務(以下、「指定商品等」といいます。)は、商標権の効力範囲を定める重要な要素です。しかし、日本と同じニース国際分類を採用する国であっても、指定商品等の選択にあたっては、各国のルールを踏まえて慎重に検討しなければなりません。
中国は、ニース国際分類を採用しています。また、「类似商品和服务区分表」という、日本の「類似商品・役務審査基準商品」に相当する区分表があり、指定商品等には類似群コードが付されています。そのため、日本と同じような感覚で指定商品等を検討できるように思われがちです。しかし、中国商標出願(現地代理人を介しての直接出願)を行う場合は、いくつか注意すべき事があります。
①指定商品等を自由に記載することはできない
日本では、「類似商品・役務審査基準商品」に掲載された商品・役務(以下、「商品等」といいます。)を記載できるのはもちろんのこと、適当な例がない場合は、個別具体的に記載することができます(一般に「積極表示」といいます。)。
一方、中国では、指定商品等を選定するにあたっては、原則として「类似商品和服务区分表」の記載の中から選ばなければなりません。一部例外として、商標局が認めた記載については、区分表に掲載されていなくても採用可能ですが、それ以外はほとんど認められません。
②指定商品等の補正は一度きり
日本では、指定商品等の内容については実体審査の段階で検討が行われます。指定商品等の記載が不明確・不適切な場合は、拒絶理由が通知されます。出願人は、審査官の案に沿って補正を行ったり、説明書を提出してより良い補正案を求めたりすることができます。
一方、中国では、指定商品等の記載が不明確・不適切な場合は「方式違反」となり、補正通知が発せられます。出願人は、この段階で補正を行うことができますが、適切な補正が行われなかった場合は出願が却下されてしまうため、問題を確実に解消できるよう、区分表の記載を採用するか、商標局が認めた記載を採用するしかありません。
③上位概念的記載は認められない
日本では、「類似商品・役務審査基準商品」において、「被服」「菓子」等の上位概念的記載が認められています。そのため、具体的な取り扱い商品は決まっていなくても、商品のカテゴリーさえ決まっていれば、細かなところまで定めずに指定商品等を選択することができます。
一方、中国では、上位概念的記載が認められていません。そのため、「被服」について権利を取得したい場合は、「スーツ」「ベスト」「ドレス」など、「被服」の下位概念に属する商品を区分表の中から選んで記載する必要があります。
④指定商品数が増えると追加官庁費が発生する
日本では、同一区分内であれば、指定商品の数によって追加官庁費が発生することはありません。
一方、中国では、1区分内の指定商品数が10点を越えると、1点につき30人民元の追加官庁費が発生します。上位概念的記載が認められていないため、広くカバーするにはより多くの商品を指定する必要がありますが、その場合は多くの追加官庁費が発生します。そのため、費用を抑えたい場合は、実際に取り扱う(又はその可能性の高い)商品をしっかり吟味して絞り込む必要があります。
⑤部分優先は認められない
日本では、外国からの優先権主張を伴う商標出願において、基礎出願に含まれない商品等が指定されていたとしても、それ以外の商品等(基礎出願に含まれる商品等)については優先権を認めています。
一方、中国では、このような部分優先を認めていません。そのため、優先権主張を必須とする場合は、基礎出願に含まれない商品等を指定しないように注意し、もし補正通知を受けた場合は、当該商品等を削除する必要があります。
中国商標出願は、商品選択の自由度が低く、また商品数によっては追加官庁費が大きな負担となることがあります。その点についてはマドプロ出願の方が有利ですが、基礎となる出願・登録が必要であったり、区分数によっては直接出願の場合に比べて割高になってしまったりすることがあります。弊所では、それぞれの長所・短所を踏まえ、案件毎により良い出願方法をご提案いたします。