2022.02.28
商標出願を検討するタイミングは?
商品開発・サービス開発には、大きく分けて「①企画→②商品・サービス設計→③生産・販売・提供の計画→④リリース」という流れがあると思います。では、商品・サービスを表す名称やシンボルマーク、つまり商標については、どの段階から出願を検討するとよいでしょうか。
日本では、出願された商標の審査に約1年を要します(*早期審査やファストトラック審査が適用された場合を除く。)。これは、拒絶理由通知を受けることなく登録査定に至った場合の期間です。異議申立や無効審判によって登録が取り消されてしまうこともあるため、「登録査定を受ければ安心」とはいえませんが、商標の使用開始までには審査を終えていることが望ましいでしょう。
拒絶理由通知を受けないようにするためには、予め、登録可能性の高い商標を採択することが重要です。それには商標調査が不可欠です。調査に要する期間は商標数や商品・役務の範囲によって変動しますが、弊所の経験では、概ね、最初のお打ち合わせから1~3週間(*正式発注までに要するお客様の検討時間を含む。)で調査結果をご報告することが多いと思います。しかし、1回の調査で第一希望の商標についてOKが出ることは極めて稀です。既存の言葉からなる商標や、音数の少ない商標の場合は、識別力や類似の問題で、2回3回と調査を繰り返すことがあります。そのため、出願商標を採択するまでには、1~2ヶ月を要するものと考えておく必要があります。
そうしますと、「④リリース」までに「登録査定」に至っていることを目標とする場合、遅くとも、リリース予定日から遡って1年+1~2ヶ月前には、商標出願について検討を開始する必要があるといえます。その時期が「②商品・サービス設計」の頃なのか、あるいは「③生産・販売・提供の計画」の頃なのかはプロジェクトの規模によって変わると思いますが、商標登録までにはそれなりに時間がかかるということを念頭に置いて、早めに検討されることをお勧めします。
なお、商品開発のスピードが速く、商標出願の検討が間に合わないという場合もあると思います。その場合は、特に入念に商標調査を行い、「④リリース」までに出願だけでも済ませておかれることを強くお勧めします。理由は、「④リリース」後は、他人に同じような商標を出願されてしまうリスクが高くなってしまうためです。日本の商標制度は「先願主義(早い者勝ち)」を採用しているため、単に「自社のほうが先に商品をリリースしていた」と主張しても、ただそれだけでその他人の出願が却下されるということはありません。そして、出願順に審査が行われ、その他人の商標が先に登録されてしまった場合は、それ以降、同じような商標を使用することができなくなってしまいます(使用許諾・アサインバックによる解決策は割愛します。)。
上記のスケジュールはあくまで理想であり、実際には、商標出願の検討が後回しになって、「④リリース」後に、初めて出願のご相談を頂くということも珍しくありません。しかし、その段階では、登録可能性が低くてももはや変更することができず、たとえ登録に至ったとしても、拒絶理由通知への対応や、拒絶査定不服審判の請求等により、多くの時間と費用を要することとなります。
どれほど良いネーミングであっても、また洗練されたシンボルマークであっても、商標登録を受けることができなければ、安全に使用することはできません。また、他人の登録商標との類似の問題を解消できなかった場合は、商標権侵害を回避するために、商品名やシンボルマークの変更を余儀なくされることもあります。せっかくの新商品・新サービスが商標問題でつまずくことが無いよう、早めのご検討をお勧めします。