2021.12.27
海外で商標を保護するための2つの出願方法(直接出願,マドプロ出願)
近年、多くの企業が、「海外売上高比率」の向上を経営目標の一つに掲げるようになっています。海外における商標保護の必要性は高まる一方ですが、ではどのように商標出願の手続きを進めると良いでしょうか。今回は、海外で商標を保護するための2つの出願方法をご紹介します。一つは、各国の現地代理人を介して商標局へ出願する方法です(以下「直接出願」といいます)。もう一つは、マドリッド協定議定書に基づく商標の国際登録制度を利用して出願する方法です(以下「マドプロ出願」といいます)。それぞれ以下の特徴があります。
直接出願 | マドプロ出願 | |
---|---|---|
出願可能国 | 商標制度を有する全ての国や地域 |
マドリッド協定議定書の締約国のみ |
出願時に発生する費用 | ・現地代理人の手数料 ・各国の官庁費 (+日本の特許事務所の手数料) |
・WIPO国際事務局の手数料 |
パリ優先権主張 | 可能(日本出願の出願日から6ヶ月以内) | |
基礎となる出願・登録商標の要否 |
不要 | 必要 |
複数国で商標を保護したい場合 |
国毎に商標出願が必要 | 保護(=商標登録)を受けたい国を複数指定して一括申請可能 |
使用言語 | 各国が指定する言語 | 英語 |
指定商品の検討 |
現地代理人に依頼することができる |
出願人又は出願を代理する日本の特許事務所が自ら行う。 |
商標局が審査に着手するまでの流れ |
出願人→現地代理人→商標局 |
出願人→日本国特許庁→WIPO国際事務局→各国商標局 |
審査結果が通知されるまので待ち時間 | 各国の審査実情による (半年~2年超など) |
国際事務局の通知日から1年又は18ヶ月以内 |
拒絶通報への対応 | 現地代理人を介して行う | |
存続期間 |
各国の定めによる |
国際登録日から10年 |
その他の特徴 |
・日本における出願・登録を必要としないので、海外専用ブランドとして商標を使用する場合に好適。 ・出願しようとする商標が明らかな不登録事由を有する場合、現地代理人が問題を指摘してくれるので、商標を変更するなどの対策を講じることができる。 ・1~2ヶ国に対し、1区分の出願を行うだけであれば、マドプロ出願よりも低コストなことが多い。 |
・日本と海外で同じ商標を使用する場合に好適。 ・国際登録日から5年以内に基礎の出願・登録が消滅すると、国際登録も消滅する(セントラルアタック)。 ・現地語への翻訳が不要で、現地代理人手数料も発生しないため、直接出願よりも低コストで出願可能。 ・マドプロ加盟国の保護期間は全て同じなので、存続期間の期限管理がし易い。 |
弊所取扱件数 | 6,000件超 | 500件超(指定国は4,000超) |
直接出願とマドプロ出願のどちらが良いというものではありませんが、たとえば、すでに日本で登録済みの商標を、3以上の国や地域に出願しようとする場合は、マドプロ出願の方が低コストであることが多いといえます。難点として、マドプロ出願は、指定商品を検討するにあたって現地代理人のアドバイスを期待することができない(=自分で検討しなければならない)ため、ノウハウの多寡によって出願品質に大きな差が生じますが、弊所ではこれまでの豊富な経験により、高品質な出願サービスを提供することが可能です。また、マドプロ出願であっても、拒絶通報に対応する際は現地代理人を介して行う必要がありますが、弊所は全世界で1,000以上の現地代理人と取引があるため、ほとんど全ての国の案件について対応することができます。海外への商標出願をお考えの際は、ぜひ弊所にご相談下さい。