2021.07.27
J-PlatPatの「商標検索」を利用する場合の注意点
独立行政法人工業所有権情報・研修館が提供する「J-PlatPat」を利用すると、誰でも、無料で、商標を調べることができます。しかし、Google検索と同じような感覚で利用すると、判断を誤ってしまうおそれがあります。出願のチャンスを逃す程度で済めば良いのですが、場合によっては、商標権侵害の危険に気付かないまま商標の使用を開始してしまうことも起こり得るため、J-PlatPatの利用にあたっては十分な注意が必要です。
そこで今回は、「よくある勘違いの事例」をご紹介いたします。J-PlatPatのシステムや商標制度について十分な知識を持たないまま商標検索を行うことはあまりお勧めできませんが、ご参考になれば幸いです。
よくある勘違いの事例
(1) 検索ヒット件数が0件ならば、登録可能だと思ってしまう。
→たとえば識別力(商標としての特徴)を有しない場合は、そもそも商標登録のための最低条件を満たしません。またそのため、J-PlatPatで検索しても、参考となる商標が抽出されない可能性があります。識別力を有するか否かを判断するには、商標法第3条に沿って検討する必要があります。
(2) 同じ表記の商標が検出されなければ、登録可能だと思ってしまう。
→原則として、字面が違っても、称呼(読み)が同じであれば、商標登録は極めて困難です。たとえば、商標登録を受けたい商標が「WORLD」であり、検索結果に挙がった他人の登録商標が「ワールド」であるなら、商標登録の可能性は極めて低いと言わざるを得ません(※指定商品も同一又は類似であることを前提とします。)。
(3) 同じ称呼(読み)の登録商標がヒットした場合、商標登録の見込みは無いと思ってしまう。
→原則として、商標登録を受けようとする商標の指定商品と、検索結果に挙がった他人の登録商標の指定商品とが同一又は類似でないなら、その商標は、登録の障害にはなりません(※知名度の高い商標の場合は、例外的に検討する必要があります。)。
(4) 類似度の高い商標が、検索上位に挙がってくると思ってしまう。
→出力条件は、検索項目によって異なります。例えば「商標(検索用)」の場合は、登録番号の若い順に表示されます。また、「称呼(類似検索)」の場合は、「称呼基準」の若い順に表示されます。この「称呼基準」とは、J-PlatPatにおける独自の基準であり、システム上の検索条件を15種類に分けたものです。J-PlatPatの出力順位は、商標の類似の程度とは無関係であるため、脅威の程度を計るには、商標の審査基準に関する知識が不可欠です。
(5) J-PlatPatの内の情報が特許庁の公式見解であると思ってしまう。
→J-PlatPatの商標検索によって抽出された商標の書誌情報を見ると、「称呼(参考情報)」の欄に、その商標から生じ得る称呼がカタカナで表示されています。しかし、「称呼(参考情報)」と書かれているように、これはあくまでJ-PlatPat検索用の参考情報であって、審査官が公式に認めた称呼ではありません。商標の類否判断にあたっては、この部分の記載にとらわれることなく、審査基準や取引者・需要者の認識等を考慮に入れて、商標から生じ得る称呼を検討する必要があります。
なお、弊所では、J-PlatPatの操作方法や、お客様ご自身の検索結果等に関するお問い合わせ・ご質問につきましては一切お答えいたしかねます。独立行政法人工業所有権情報・研修館のウェブサイトにてお調べいただくか、或いはヘルプデスクをご利用くださいますようお願いいたします。