日本の特許状況から見たオンダ国際特許事務所
弁理士 岡田恭伸
パートナー副所長の岡田と申します。私は2021年9月にパートナー副所長に就任いたしました。経営層の一人となってから2年程度であり、まだまだ駆け出しの若輩者ではありますが、今回は、特許庁から公開された『特許行政年次報告書2023年版』(https://www.jpo.go.jp/resources/report/nenji/2023/index.html)を参照して日本の特許状況についてご紹介するとともに、それを踏まえてオンダ国際特許事務所の今と未来について少し述べさせていただきたいと思います。
まず、特許出願件数についてです。図1に示すように、日本の特許出願件数は2013年から緩やかな減少傾向が続いていましたが、ここ2年はほぼ横ばいとなっています。減少傾向が止まったのか、または上昇に反転するのか気になります。
なお、特許出願数はほぼ横ばいですが、その内訳は少し変化しているように思えます。図2は、中小企業の特許出願件数の推移を示すグラフです。特許出願件数の全体に占める、中小企業の出願件数の比率である出願件数比率が、少しずつではありますが増加しています。出願件数自体が大幅に増えているわけではありませんので、大企業による「量から質へ」の方針の結果が反映されていると思われます。
また、図3は出願種別の内訳になります。
図3に示すように、ここ直近2年は分割出願件数が増加しています。こちらについては、業界ごとの傾向がありますが、積極的に活用する企業と消極的な企業で二極化している印象です。積極的に活用する企業は、1つの出願から非常に多くの分割出願を行い、特許網を構築しているようです。
オンダ国際特許事務所としましては、分割出願を想定した明細書の作成をより推進していくとともに、分割出願について消極的なクライアント様に対して、必要に応じて積極的に活用するために、分割出願の有用性及びリスクについてご説明していきたいと思います。
次に、査定率についてご紹介いたします。
図4に示すように、特許査定率は非常に高い状態を維持しています。これについては、特許性が高いものを厳選して出願している、出願前調査の精度向上など、様々な要因があると考えています。特許事務所の弁理士の意見としては、近年は、拒絶理由通知書について丁寧に記載されているとともに、面接などの審査官とのコミュニケーションについても、比較的柔軟に対応していただける印象です。これにより、審査官との理解の齟齬(そご)が少なくなっていることも高い特許査定率の要因の1つであると考えています。
従来から、中間対応における対応方針や仕事の進め方については、お客様ごとにやり方が異なっていましたが、近年は、その差が大きくなってきており、お客様ごとのニーズがより多様化しています。オンダ国際特許事務所としては、特許にすることはもちろん、お客様のニーズに合わせた適切な対応をしていきたいと思います。特に、拒絶理由から審査官の意図を汲み取り、適切な提案を行うことは、代理人に求められる重要な要素であると考えています。
なお、一時期は「審査が甘いのではないか?」といった声も聞かれていましたが、私個人としては、裁判所の傾向に基づいて、概ね適正な基準で審査が行われていると感じています。参考までに、図5に主要特許庁の特許査定率の推移を示します。図5に示すように、現在では日本の特許査定率が突出して高いということはなく、米国及び韓国と同じような水準だといえます。一方、欧州及び中国の特許査定率は、日本などと比較すると低くなっています。今これを読んでいただいている方の中には、「日本や米国では通ったのに、中国で拒絶された。」といった経験をされた方もいらっしゃるかもしれません。それはイレギュラーなことではなく、全体的な傾向であると考えます。
ちなみに、オンダ国際特許事務所は、所属する米国弁護士及び中国弁理士により、グローバルな対応ができる体制を整えており、特に中国出願については、日本の他事務所に先駆けて上海オフィスを設立し、長年ノウハウを蓄積してまいりました。
今後も、米国及び中国を中心とする外国出願の重要性は、高い状態を維持すると考えられますので、オンダ国際特許事務所は、今後もグローバルに対応できる体制を強化していきます。
以上、特許についてご紹介いたしました。機会がありましたら、意匠/商標についても触れてみたいと思います。最後までお読みいただき、ありがとうございました。