ジェトロ派遣について
(パテントメディア2015年5月発行号掲載)
弁理士 金森晃宏
私は、現在もオンダ国際特許事務所に所属しておりますが、2014年4月より日本貿易振興機構(ジェトロ)で知的財産に関わる様々な業務を行っています。経緯としては、日本弁理士会において弁理士をジェトロへ派遣するプロジェクトが2014年度から始まり、同プロジェクトの公募で選んでいただいたためで、ジェトロ東京本部で昨年4月から半年間研修を受けた後、10月よりタイにあるジェトロバンコク事務所で勤務しています。
元々岐阜に住んでおり、海外での生活は慣れないことが多いですが、オンダ国際特許事務所の援助もあり、精力的に様々な活動ができています。今回は、主にジェトロバンコクでの業務を紹介しつつ、タイでの生活で感じたことを書きたいと思います。
1.バンコクの様子
旅行や出張でバンコクへ行ったことがある方はご存じかと思いますが、非常に発展した都市です。市内には、高層ビルが数多く立ち並び、高架鉄道(BTS)や地下鉄、スワンナプーム国際空港と市内を結ぶエアポートリンクなどの公共交通機関も充実しており、東京とまではいかないまでも、岐阜などと比べるとはるかに都会です。
またバンコクには、レストランも非常に多くあります。実は私は、辛いものが苦手なので、あまりタイ料理は食べないのですが、日本食レストランも多いので助かっています。また、マックスバリューなどのスーパーマーケットやセブンイレブンなどのコンビニエンスストアもあり、日本よりも高価ですが、いろいろな日本の食材も比較的簡単に手に入れることができます。
このようにバンコクは住みやすいところですが、困る点もあります。特に困ることとしては、渋滞がひどいことです。移動の際にタクシーなどを利用する機会があるのですが、移動時間が読みにくく、かなり時間に余裕をみて行動しなければなりません。
2.ジェトロバンコクの様子
世界中にジェトロの海外事務所が設置されていますが、ジェトロバンコク事務所は、東南アジア地域の統括センターと位置付けられており、日本人スタッフ約20名、ナショナルスタッフ約20名が勤務する大きな事務所です。事務所には、ジェトロプロパーの職員以外にも、経済産業省などからの出向の方や、私も含む民間からの研修生も多くいます。知的財産部は、特許庁から出向されている元審査官・審判官の高田元樹部長(写真中央)、日本国弁理士の澤井容子知財専門家(写真左から2番目)、ナショナルスタッフのMs. Nantanatnida Ingkakul(写真右)、大学生でアルバイトのMs. Mathurin Limhassanaikul(写真左)に私(写真右から2番目)を加えた5人体制となっています。
ジェトロバンコク知的財産部では様々な業務を行っておりますが、主なものとしては、アセアン各国の法令や知財動向などの調査事業や、セミナー開催やメールマガジン配信などによる情報発信があります。なお、こうした調査事業は、我々が直接調査するのではなく、現地の法律事務所などに委託して行っています。また、アセアンに進出している日系企業等からなる東南アジア知財ネットワークの事務局として活動しており、日系企業間の情報共有の場やアセアン各国政府との対話や協力の場を設ける活動もしています。さらに、ジェトロバンコク知的財産部は、日本国特許庁の駐在員事務所としても機能しており、アセアン各国の知財庁とのMOC(協力覚書)締結に向けた調整や意見交換、協力を行っています。
このように業務を通じてタイ人などアセアンの方と接する機会が多くありますが、国民性として日本人よりも大らかな人が多いです。ただ、不誠実なわけではなく、勤勉で真面目な人たちが多いので、文化の違いを考慮して歩み寄る必要があると感じます。
3.仕事以外のこと
タイでは、ゴルフが非常に盛んで、多くの日本人駐在員の方がプレーしています。私は、タイに赴任するまでは全くやったことがなかったのですが、タイでゴルフを始めました。正直なところ、まだ初心者でゴルフ自体が楽しいということはないのですが、いろいろな人たちとコースを回る間に沢山の話をすることができるのがいいなと感じます。また、ゴルフ以外にサッカーも人気があり、月に1回、ジェトロバンコクや日本大使館の人たちが集まってサッカーをします。普段、走ることはないので非常に疲れますが、ゴルフをしない人たちとも知り合いになることができますし、たまには汗をかくのもいいものだと感じます。
また、年末年始などの連休には、近隣諸国に旅行へ行きます。お正月には、カンボジアのアンコール遺跡群にバスで行ってきました。タイにいる間は道路も広く、よく整備されているのですが、カンボジアに入ると、道路も狭くなり、あまり整備されているとは言いにくい状態でした。シェムリアップに着いてからも高層ビルなどは一切なく、アセアンは国の発展度合いのばらつきが大きいとは聞いていましたが、よく実感できました。
今回のジェトロへの派遣プログラムは、2016年3月末までと決まっており、あっと言う間だと思いますので、多くのことを経験し、弁理士会とオンダ国際特許事務所になるべく多くのことを還元できるよう頑張っていきたいと思います。
以上