私の仕事
(パテントメディア2013年5月発行第97号掲載)
弁理士 八代則子
私は外国のお客様が日本で商標権を取得・維持等するための手続きに関する仕事をしています。
責任とやりがい
当所は、イギリス、イタリア、インド、ウルグアイ、オーストラリア、カナダ、韓国、シンガポール、スイス、スウェーデン、タイ、台湾、中国、チリ、香港、デンマーク、ドイツ、ニュージーランド、フランス、米国、ベトナム、ブラジル、マレーシア、南アフリカ、ロシア等、様々な国のお客様から商標に関する手続きのご依頼を頂いています。
これだけ多くの国のお客様からご依頼を頂き、日本での商標権取得・維持等の手続きに携われることは、とてもありがたいことだと常々感じています。
仕事は大変やりがいがありますが、それに相応する重責が頭から離れることはありません。気になっている案件のことが心ならずも思い出される休日も少なくありません。
専門家としての自分の見解・意見・説明を基にしてお客様が判断をされ、その判断に基づいてお客様のビジネスの方向性が決定付けられていくことも多いので、コメント1つにしても軽々しく書けるものではなく、自分の仕事がいかにお客様のビジネスに影響するかを考えると、注意深く、落ち着いて業務に取り組まなければならないと気持ちが引き締まります。コメントを送った後でも、その内容を思い返してしばらく考え込むこともあります。
時々ではありますが、気にかかっていた仕事が夢に出てくることがあり、仕事のことが無意識のうちにこんなにも脳内を占めていたのかとびっくりします。
お客様・現地代理人とのコミュニケーション
外国の企業様から当所に直接ご依頼を頂くケースもありますが、こういったケースは割合としては少なく、ご依頼のほとんどは、外国の企業様がその国の現地代理人に日本での商標権取得等に関する手続きを依頼され、その現地代理人が日本の代理人として当所を選んでご依頼を下さるケースです。
韓国・台湾・中国の現地代理人の一部からは、日本語で依頼書を頂くことがあります。そういった場合には日本語で連絡をとりますが、それ以外の現地代理人とのコミュニケーションで使う言語は、基本的には英語です。
よく使う用語はある程度決まっているとはいえ、商標権の取得等に関する手続きは専門性が高く、それらに関するコミュニケーションを英語で適切に行うのは容易なことではなく、とても神経を使います。
現地代理人との連絡はEメールで行うことが多いです。Eメールでのコミュニケーションにおいては、内容が適切であること、情報が正確であること、文章が平易なものであること、対応が迅速であること、誤字・脱字がないこと、文面のフォーマル度を先方に合わせること、等を心がけています。
現地代理人には英語が母国語でない方も多いので、意思の疎通がうまく図れるよう、疑義・複数の解釈が生じるような表現は避け、また、英語が母国語である現地代理人もあまり使わないと思われる、使用頻度が少ない難しい言葉は使わないようにしています。
頻繁にEメールで連絡をとっている現地代理人であっても電話で話すことや対面する機会は少なく、現地代理人が日本の代理人を選ぶ際にはEメールでのコミュニケーションも重視されるポイントの1つであると思いますので、気が抜けません。
複数の案件が常に同時進行しているのですが、仕事に取り掛かる際には、緊急性や難易度だけではなく、現地との時差も意識しながら、優先順位を決めるようにしています。日本との時差があまりない国の現地代理人からはこちらがEメールを送ってから即時に回答を頂けることもあり、すぐに次のステップに進めるからです。
励みになること
「○○事務所の□□さんから日本の代理人としてあなたを推薦され、連絡先を教えてもらいました」といった書き出しで始まるEメールを新規の現地代理人から頂くことがあります。
既にやりとりのある現地代理人がこれまでの私共の仕事に満足され、こういった紹介につながったのかと思うと、これほどうれしく、励みになることはありません。
今後の課題
日本で商標権を取得しようとする企業様の商品等は新製品であることも多いので、いろいろなことにアンテナを張って、日々を過ごしたいと思っています。
貴重な機会を与えられていることに対する感謝の気持ちを忘れることなく、怠ることなく研鑽を積んで、日々の業務に取り組んでいきたいです。