オンダ特許のベンリ士
(パテントメディア2011年1月発行第90号掲載)
弁理士 中嶋恭久
オンダ特許の弁理士の中嶋と申します。今日は、小職の仕事を紹介したいと思います。
オンダ特許は、「何でも対応できる特許事務所」が大きな特徴です。オンダ特許には、いろいろな技術の専門家がいます。例えば、エンジン、バイオ、アナログ回路、高分子化学、IT、遊技機に至るまで実に様々な多岐に亘る百数十人の技術の専門家がいます。また、法律的には意匠・商標専門の弁理士、外国法・調査の専門家や、知財事件に強い顧問弁護士がいます。また、語学的にも多数の言語を扱い、英語、中国語ではネイティヴも在籍します。そのため、クライアントがオンダ特許に来ていただければ、我々はありとあらゆる専門的なサービスを提供できます。
ところが専門化が進むと不便なこともあります。つまり、複数の部門に業務が亘る場合それぞれの専門家がお互いの業務のことがよくわからない場合があります。クライアントにとっても、どのセクションに任せたらよいかわからない場合もあります。最近「コンシェルジュ」という言葉をよく耳にします。これは、一流ホテルなどで、内容を問わずどんなことにも相談に乗ってくれるスタッフのことをいいます。とりあえずこのコンシェルジュに任せれば何とかしてくれます。オンダ特許でも、クライアントのあらゆる問題についての窓口になるようなスタッフを必要としています。そして、如何なるケースでも最適・最善のサービスができるようにしています。いわば、オンダ特許のコンシェルジュです。ちょっとかっこよすぎるので、わかりやすい表現をすれば、「特許事務所の便利士(便利屋)」です。今でこそ「ベンリシ」といえば、特許の仕事ですか?っていわれるようになりましたが、以前はたびたび「便利屋」と間違えられることもありました。
それでは、私の仕事の例をご紹介します。
その前に、知財部が無いような小さな企業でも、企業がするべき知財業務は大企業と同じです。多くの場合兼任で知財担当をされています。しかしながら、規模が小さいからといって、知的財産にかかわる問題を競業他社が大目に見てくれるわけではありません。この問題を避けて通ればその企業にはビジネスチャンスはありません。
現在世界的な超巨大企業であるトヨタグループやパナソニック電工も、最初は今で言えばベンチャー企業で、豊田佐吉の自動織機や、松下幸之助の二股ソケットなど独自の技術やアイデアを武器に成長して来たものです。どれだけ「知財」を味方につけるかが重要なことなのです。
企業における知財業務は、多岐に亘ります。このような中、「便利士」は、ジャンルを問わずクライアントのあらゆる相談に乗るコンサルタント・アウトソーシングとして機能します。もちろんすべてにおいて専門家ではありません。医者で言えば専門医ではなく、かかりつけの町医者のようなもので、日々の健康状態をチェックして一番患者のことを知り、必要があれば専門医と相談して処置します。
ここで、その「便利士」の仕事です。まずは、弁理士の本分ともいえる発明の発掘・抽出・権利化ですが、これが面白くて弁理士になったともいえます。インタビューを通じて発明者の発明した実施品から見えない思想を形にする、発明者が気が付いていない本質を指摘する、他のものへの展開を考えるのは、本当に楽しいものです。審査官をしていたアインシュタインの「特許を通じて本質を見抜く訓練をした」という言葉が思い出されます。
また、新製品を開発するときに、新たに開発した自社技術を保護することはもちろんですが、それ以前の問題として事業を安全に実施するため、他社の地雷を踏まないように適切な抵触調査をすることはさらに重要です。また、技術だけでなくネーミング・デザインなどにより新製品をバックアップすることもポイントです。そのようなときはオンダの意匠・商標・調査部門のそれぞれの専門家をフル活用してコストパフォーマンスの高い効率のよい方法をアレンジ・ご提案します。
私が所属しているセクションは、審査・審判・裁判などの中間手続・係争を中心に担当する部門です。
そこで行うのは、まず権利化のための拒絶理由通知の対応や審判、審決取消訴訟ですが、これらの仕事は高いスキルが必要です。オンダ特許は、これらの業務に特化した場数を踏んだスキルの高いグループで対応しております。たとえば審査官面接も過去数十件での戦績は、ほぼ100%の勝率です。発明者の熱い魂で、クールな審査官のハートを動かすノウハウがあります。
また、抵触鑑定を始め、特許の有効性の鑑定など他社との係争については、クライアント社内ではできない精緻で客観的な判断をいたします。特に、鑑定は、甘い判断をすると、他社から訴えられ却って対応に莫大な費用が掛かるばかりか、製造を継続できなくなる場合も生じます。一方、安全に走り、厳し過ぎる判断をすれば肝心要の事業のチャンスを潰してしまいます。このような判断は社内である知財部内では重いですので、社外で客観的な判断をするのが一番です。
そして、他社との紛争は特許権の本質であり、係争の専門家である弁理士の本来のフィールドです。特に侵害訴訟は、プロ同士の命を懸けた絶対負けられない真剣勝負の場所だと思っています。そのため、毎月2~3回は弁護士さんたちも含め、判例などの勉強会をしています。
一方、日々の知財業務で、「ちょっと聞きたい、知りたい」けど、誰に聞いたらいいかわからないことがたくさんあります。不正競争防止法・独禁法・著作権法・契約などに関する民法なども、クライアントが落とし穴に陥ることが無いように常に知識を磨いています。特許法でも職務発明の規定などは取り扱いが特殊です。また、知的財産の経済的な価値の評価・鑑定なども裁判所での鑑定ができる弁理士会の評価人として研鑽を積んでいます。さらに、所内やクライアントの要求にあった新人や発明者の研修・講演なども行います。
ところで技術やビジネスは近年ますますグローバル化しており、中小企業でもこれを無視したら世界での大きなビジネスチャンスはありません。近年特に中国のパワーは目を見張るものがあります。私もオンダ上海オフィスに毎月出張し、中国での生の事情を肌で感じるようにしています。中国語も早く話せるようになりたいと思っています。
「外国はちょっと敷居が高い」って感じるときがあります。そんなときでも、気軽にご相談ください。当所に在籍する中国弁理士や米国弁理士などの専門家の力を借りて、適切なアドバイスができるようにします。
以上のとおり、私はこれといった専門的なことはできませんが、このように専門家集団であるオンダ特許が、本当に「何にでも対応できる特許事務所」であるべく、その隙間を繕う「便利士」も、ある意味「専門家」であると密かに自負している次第です。そのため、いわゆる効率の悪い仕事も多いのですが、名脇役・世話女房として、クライアントから信頼され、便利だったとお褒めの言葉をいただくのが、一番嬉しく、エネルギー源になっています。