商標審決レポート(nyan balance)|知財レポート/判例研究|弁理士法人オンダ国際特許事務所

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商標審決レポート(nyan balance)

「nyan balance」と猫の図形からなる商標は、「new balance」とNBのロゴからなる商標とは、非類似で、商品の出所について誤認混同を生ずるおそれはなく、「公序良俗違反」や「不正の目的」に該当する事実も認められないとして申立て不成立とされた事案

2024年8月27日
弁理士 木村達矢

審判番号

異議2023-900073(対登録第6669617号)

決定 決定
審決日 2023年12月22日
出願人

黒川 暢朗

請求人

ニュー バランス アスレティックス,インコーポレイテッド

商標

本件商標
商標審決レポート(nyan balance) | 2024年

引用商標3
商標審決レポート(nyan balance) | 2024年

指定商品 第25類「被服,ガーター,靴下留め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴,帽子」
決定の内容

1 申立人は、1906年に米国ボストンで矯正靴の製造メーカーとして創業し、現在、ランニングをはじめ、ライフスタイル、テニス、ベースボール、フットボール(サッカー)等のためのシューズとアパレルを幅広く展開していること、我が国におけるスニーカーブランドやスポーツブランドの人気度の調査において、「new balance」ブランドは、上位にランキングされている。
しかしながら、引用商標を使用した商品の現在の売上高や使用開始後から現在に至るまでの推移、申立人商品に関する宣伝広告の方法やその提供手段、広告宣伝費等、引用商標の周知著名性を数量的に判断することができる証拠は提出されていない。
そうすると、申立人の主張及び申立人の提出した証拠によっては、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人商品を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。

2 本件商標と引用商標は、観念において比較できないとしても、外観及び称呼において相紛れるおそれがないものであるから、これらの外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、これらは相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。

3 本件商標権者が本件商標をその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標及び申立人商品を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはない。

4 本件商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激若しくは他人に不快な印象を与えるものではないことは明らかである。
また、申立人が提出した全証拠を確認しても、本件商標が引用商標及び申立人商品に化体した信用、名声及び顧客吸引力にただ乗りする不正な目的で採択・登録出願されたものであるとすべき具体的事情を証明するところはなく、本件商標権者が本件商標を不正の目的をもって使用するものと認めることはできない。
さらに、本件商標が、国際信義に反する又はその出願及び登録の経緯に社会的相当性を欠くなど、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標というべき事実は見当たらず、本件商標をその指定商品について使用することが、社会の一般道徳観念に反し、商取引の秩序を乱すものともいえない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第115号、同項第19号のいずれにも該当しない。

コメント

本件はいわゆるパロディ商標の事案ですが、new balanceを茶化している意図は感じられますが、文字及び図形が大きく相違しているうえ、パロディは、広く知られている既成の作品を、滑稽化・風刺化の目的で作り変えたものであり、需要者はそのことを認識できることから、一般的に類似及び混同を認定することは困難と考えられます。現行商標法では、著名商標の希釈化や汚染を直接防止する規定を欠くことから、「公序良俗違反」や「不正の目的」を認定できない限り、一般的にパロディ商標を規制することは困難と思われます。