商標審決レポート(smart)
本願商標「smart」は商標法第3条第1項第6号に該当し、登録することができないとされた事案
2024年7月31日
弁理士 八代則子
審判番号 |
不服2023-001186 (商願2022-023241) |
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審決/判決 | 審決 |
審決日 | 2024年6月19日 |
出願人 | 株式会社トライアルカンパニー |
商標 | smart(標準文字) |
指定商品・役務 | 第35類 衣料品・飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供 |
審決の内容 |
(1)商標法第3条第1項第6号該当性について 本願商標は、「smart」の文字を標準文字で表してなるところ、これは「頭の良い、知能の高い、利口な、コンピュータ制御の」等を意味し、一般に親しまれた語である。 そして、本願指定役務に関連する小売業界においては、近年、IoTやAI技術を積極的に活用することにより店舗の運営効率化を図る取組が行われている実情が見受けられ、別掲のとおり、「スマートストア」や「スマートリテール」など、前記AI技術等を活用した小売の経営手法(店舗形態)を表す際に、「smart」の表音を片仮名で表した「スマート」の語が広く使用されている事実が認められる。 そうすると、「smart」の文字からなる本願商標をその指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者は、IoTやAI技術を積極的に活用することにより運営効率化を図る小売の経営手法(店舗形態)であるという、役務の特徴を説明するための語であると理解、認識するにすぎないものであるから、本願商標は、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものであり、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標というべきである。 したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。 (2)請求人の主張について 請求人は、本願指定役務に関連する小売業界において、AI技術等を活用した小売の経営手法(店舗形態)を表す際に、一般的に使用されているのは「スマート〇〇」であり、「smart(スマート)」の語が広く使用されている事実は存在しないことから、本願商標は、出所識別力のある商標である旨主張する。 しかしながら、「smart(スマート)」の文字が単独で使用されている事実が少ないとしても、前記(1)のとおり、本願指定役務に関連する小売業界においては、近年、IoTやAI技術を積極的に活用することにより店舗の運営効率化を図る取組が行われている実情が見受けられ、「スマートストア」や「スマートリテール」など、前記AI技術等を活用した小売の経営手法(店舗形態)を表す際に、「smart」の表音を片仮名で表した「スマート」の語が広く使用されている実情を考慮すれば、「smart」の文字からなる本願商標をその指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者は、IoTやAI技術を積極的に活用することにより運営効率化を図る小売の経営手法(店舗形態)であるという、役務の特徴を説明するための語であると理解、認識するにすぎないものであるから、本願商標は、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものである。 また、請求人は、本願商標の登録適格性を主張するために、他の登録例を挙げているが、登録出願に係る商標が商標法第3条第1項第6号に該当するものであるか否かの判断は、当該商標登録出願の査定時又は審決時において、その指定役務との関係において、個別具体的に判断されるものであって、他の登録例の存在によって、上記判断が左右されるものではない。 したがって、請求人の主張は、いずれも採用することができない。 (3)まとめ 以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当し、登録することができない。 |
コメント |
請求人は、本願商標の登録適格性を主張するために、以下の登録例を挙げている。 SMART(標準文字)(登録6179305号、第10、25、35類) |