商標審決レポート(JPX)|知財レポート/判例研究|弁理士法人オンダ国際特許事務所

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商標審決レポート(JPX)

本願商標「JPX」は他人の名称の著名な略称を含む商標ということはできないとして登録すべきとされた事案

2023年10月5日
弁理士 八代則子

審判番号

不服2022-009170 (商願2021-014789)

事案の概要

本願商標「JPX」は「株式会社日本取引所グループ」の著名な略称を含む商標ということはできない

審決/判決 審決
審決日 2023年6月30日
出願人

株式会社シンターランド

商標

商標審決レポート(JPX) | 2023年

指定商品・役務

第7類 焼結機,その他の化学機械器具,鋳造機械器具,金属加工機械器具,プラスチック加工機械器具,半導体製造装置,業務用電気洗濯機,業務用攪はん混合機,業務用皮むき機,業務用切さい機,業務用食器洗浄機,軸(陸上の乗物用のものを除く機械要素),軸受(陸上の乗物用のものを除く機械要素),軸継ぎ手(陸上の乗物用のものを除く機械要素)

審決の内容

(1)商標法第4条第1項第8号について
商標法第4条第1項第8号は「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)」とするものである。
そして、商標の登録要件は、指定商品又は指定役務ごとに判断されるものであるから、本願商標の商標法第4条第1項第8号該当性の判断における、他人の略称の「著名性」も、本願商標の指定商品の属する分野との関連において検討されるべきである(平成14年(行ケ)第150号、東京高裁平成14年9月24日判決参照。)。

(2)本願商標の商標法第4条第1項第8号該当性について
本願商標は、別掲のとおり、「JPX」の欧文字を横書きしてなるところ、当審において職権をもって調査するも、当該文字が「株式会社日本取引所グループ」の略称として用いられ、金融分野における需要者、取引者の間では知られているとしても、その略称が、本願商標の指定商品(「焼結機,その他の化学機械器具,金属加工機械器具」等)の分野における需要者、取引者の間にまで広く一般に知られており、当該分野において、「JPX」といえば上記「株式会社日本取引所グループ」のことを指していると認識させるほどの著名性を獲得していると認めるに足りる事実は見いだせない。
そうすると、本願商標は、他人の名称の著名な略称を含む商標ということはできないから、商標法第4条第1項第8号に該当するということはできない。

(3)まとめ
したがって、本願商標が商標法第4条第1項第8号に該当するとして本願を拒絶した原査定は妥当でなく、その理由をもって拒絶すべきものとすることはできない。

コメント

審決に示された平成14年(行ケ)第150号、東京高裁平成14年9月24日判決において「商標の登録要件は、指定商品毎に判断されるものであるから、当該商標の商標法第4条第1項第8号該当性が問題になった場合の他人の略称の「著名性」も、当然、当該商標の指定商品の属する分野との関連において検討されてよい」と示されている。