商標審決レポート(AI chip removal)
本願商標「AI chip removal」はその指定商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標とはいえず、かつ、商品の品質の誤認を生ずるおそれがある商標ということもできないとして登録すべきとされた事案
2023年5月9日
弁理士 八代則子
審判番号 |
不服2022-008731 (商願2020-127192) |
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事案の概要 |
本願商標は、特定の意味を有する成語ではなく、本願の指定商品との関係において、その指定商品の具体的な品質等を表示したものとして直ちに認識されるとはいい難く、むしろ、本願商標は、特定の意味合いを認識させることのない一種の造語として把握されると判断するのが相当である。 |
審決/判決 | 審決 |
審決日 | 2023年3月22日 |
出願人 |
DMG森精機株式会社 |
商標 |
AI chip removal (標準文字) |
指定商品・役務 |
指定商品 |
審決の内容 |
本願商標は、「AI chip removal」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中、「AI」の文字部分は「(artificial intelligence)人工知能。」を、「chip」の文字部分は「チップ 《集積回路をつける半導体の小片》、切れ端、削りくず」等を、「removal」の文字部分は、「除去、撤去」等を表す語であると認められる。 そして、当審において職権をもって調査するも、我が国において、本願の指定商品中、第7類「金属加工機械並びにその部品及び附属品」を取り扱う分野では、本願商標である「AI chip removal」の語が、「人工知能を用いた切りくずを除去することができる商品」を表示するものとして使用されている事実は認められず、また、本願商標を構成する各語の結合である「AI chip」、「AI removal」又は「chip removal」の語についても、特定の意味を表すものとして一般に使用されているとはいい難いものである。 同様に、本願の指定商品中、第9類「電子応用機械器具並びにその部品及び附属品,コンピュータ,コンピュータソフトウェア」を取り扱う分野においては、本願商標である「AI chip removal」の一連の語が使用されている事実は認められないものであり、また、本願を構成する各語のうち「AI」と「chip」の語が結合した「AI chip」(AIチップ)について、「AI(人工知能)に特化した半導体チップ」や、「AI(人工知能)の演算処理を高速化するための半導体」を意味する語であることはうかがえるものの、それらと「removal」の語との関係において、その語義から想定できる「AIチップを除去する商品」程の意味合いを、需要者に認識させると判断すべき特段の事情は発見できなかった。 以上より、本願商標は、特定の意味を有する成語ではなく、本願の指定商品との関係において、原審説示のとおりの意味合いを認識するとはいえないものであり、また、構成各文字を上記のとおり結合した語から生じる意味合いは漠然としたものであるから、その指定商品の具体的な品質等を表示したものとして直ちに認識されるとはいい難く、むしろ、本願商標は、特定の意味合いを認識させることのない一種の造語として把握されると判断するのが相当である。 そうすると、本願商標は、その指定商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標とはいえず、かつ、商品の品質の誤認を生ずるおそれがある商標ということもできない。 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。 |
コメント |
出願人は本願商標について、「人工知能を利用した切れ端の除去」に何らかの関係があるものとの一定の意味合いは暗示しつつも、特定の意味合いは直接的に認識されることのない、一種の造語として認識、把握されるものとみるべきである等の反論を行った。 |