商標審決レポート(Nakagishi)|知財レポート/判例研究|弁理士法人オンダ国際特許事務所

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商標審決レポート(Nakagishi)

2021年2月25日
弁理士 木村達矢

審判番号 無効2018-890088(登録第5989695号)
事案の概要 Nakagishiの欧文字からなる商標がありふれた氏、名称にあたらず無効としないと判断された事案
審決/判決 審決
審決日 2020年6月15日
出願人 深セン豪威尓電子商務有限公司
請求人 椙山紡織株式会社
商標

Nakagishi
(標準文字)

指定商品

第11類「電球類及び照明用器具,探照灯,懐中電灯,LEDを使用した懐中電灯,LED照明用器具,家庭用電熱用品類,家庭用加湿器,家庭用電気式加湿器,電気毛布(医療用のものを除く。),家庭用電気毛布,家庭用浄水器,太陽熱利用温水器,業務用加熱調理機械器具,業務用食器乾燥機,業務用食器消毒器,業務用衣類乾燥機,乾燥装置,換熱器,蒸煮装置,蒸発装置,蒸留装置,熱交換器」

審決の内容

本件商標は,「Nakagishi」の欧文字を標準文字で表してなり,その構成文字に相応して「ナカギシ」の称呼を生ずるところ,該文字は,我が国の一般的な辞書にはその記載がない。
また,請求人提出の証拠(「日本姓氏語源辞典」)によれば,「中岸」姓の数は,全国で約600人で順位は11,409位,「仲岸」姓の数は,全国で約40人で順位はランク外との記載がある。
そうすると,姓氏の一である「中岸」又は「仲岸」は,さほど多い姓氏ということはできないばかりでなく,本件商標よりは,直ちに「中岸」又は「仲岸」の姓氏を表したものと想起,認識させるともいい難いものである。
してみれば,本件商標は,姓氏の1つである「中岸」又は「仲岸」に通ずる場合があるとしても,単にありふれた氏を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標とはいえないものであって,自他商品の識別標識としての機能を有しないとはいえない。

コメント

「ありふれた氏」とは同種の氏が多数存在するものをいい、これを単にローマ字で表示するにすぎないものは、自他商品の識別力を欠くと判断されるが、どの程度であれば多数に該当するかについては必ずしも明らかでない。

本件では、ローマ字に対応する氏が合計で640人でありふれた氏にあたらないと判断された。

本件は、ローマ字に対応する漢字が2種類あるほか、「中央の岸」といった程の意味を有する一種の造語とも受け取れる。これらを総合的に考慮して、姓氏を表したものと想起,認識させるともいい難いと判断されたものと思われる。