商標審決レポート(GORGONZOLA)|知財レポート/判例研究|弁理士法人オンダ国際特許事務所

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アクセス

商標審決レポート(GORGONZOLA)

2020年9月29日
弁理士 木村達矢

審判番号 不服2019-11566(商願2015-83112)
事案の概要 「GORGONZOLA」の文字を標準文字で表してなる商標が、第29類「チーズ」について、団体商標として登録が認められた事案。
審決/判決 審決
審決日 2020年6月1日
出願人 コンソルツィオ・ペル・ラ・トゥテラ・デル・フォルマッジョ・ゴルゴンゾーラ
商標

本願商標
GORGONZOLA (標準文字)

指定商品 第29類「イタリア共和国のベルガモ県等(具体的地名は省力)において生産されるチーズ」
審決の内容

本願商標は,「GORGONZOLA」の文字からなるところ,当該文字は,「ゴルゴンゾラ(チーズ)。強い香りのする半硬質のイタリア産ブルーチーズ。」(「ランダムハウス英和大辞典第2版」株式会社小学館発行)の意味を有する語であり,特定の地名や地域を表したものと認識するものとはいい難い。
また,請求人は,ゴルゴンゾーラチーズの全生産者が加盟し、その原産地呼称の表示を保護・管理する団体であり、GORGONZOLAは,原産地称呼(DOP)、PDO(原産地称呼保護)として認定され、我が国でも広報活動が行われ、イタリア産の特定の品質のチーズを表示するものとして使用されている。
以上の事実によれば,我が国において,「GORGONZOLA」の文字は,イタリアで定められた産地で生産され,かつ,請求人による鑑定に合格したチーズの銘柄として用いられ,認識されている。

してみれば,自他商品の識別標識としての機能を果たすものとみるのが相当である。

コメント

原査定は,「『GORGONZOLA』の文字は,『イタリア国ロンバルディア州ゴルゴンゾーラ村原産のブルーチーズ』等程の意味合いを認識させるにとどまり,単にその商品の産地,品質を普通に用いられる方法で表示すると判断した。

本件商標は、地名のみからなるため地域団体商標に該当せず、産地またはブルーチーズの種類を表示するにすぎないと判断されたものと思われる。

これに対して、審決は「GORGONZOLA」の文字は,「ゴルゴンゾラ(チーズ)」の意味が辞書に掲載されていることから、我が国では地名とは認識されておらず、また、この文字が原産地称呼(DOP)、PDO(原産地称呼保護)として認定されており、請求人がゴルゴンゾーラチーズの全生産者が加盟し、当該称呼を管理する団体であることから、銘柄として認識されており、自他商品の識別標識としての機能を果たすと判断した。

本件商標は、欧州の原産地称呼(DOP)、PDO(原産地称呼保護)であることから、特定の産地の団体構成員による所定の品質を備えた商品にのみ使用されることから、自他商品の識別標識としての機能を果たしているといえるし、全生産者が加盟する団体が商標権者である限り、その独占使用を認めるのを公益上適当としないということもできないであろう(平成22年3月29日/知的財産高等裁判所/第2部/判決/平成21年(行ケ)10226号「SIDAMO」事件参照)。

本件は、地名のみからなる地理的表示(GI)に該当する表示について、我が国では産地としての認知度は低く、銘柄として認識されるとして商標登録が認められたものである。

なお、同様に産地又は販売とは認識されないとして3条1項3号非該当とした審決に不服2012-18364「パルミジャーノ レッジャーノ」がある。