商標審決レポート(kojifujita)|知財レポート/判例研究|弁理士法人オンダ国際特許事務所

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商標審決レポート(kojifujita)

2020年6月29日
弁理士 木村達矢

審判番号 不服2018-15972(商願2017-52718)
事案の概要 「kojifujita」の欧文字を標準文字で表してなる商標が、「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標」(商標法4条1項8号)に該当するとされた事案
審決/判決 審決
審決日 2020年1月20日
出願人 (省略)
商標

本願商標

kojifujita (標準文字)

指定商品 第30類 洋菓子その他
審決の内容

「藤田 孝治」等の氏名の者が存在する事実があること、我が国において、氏名の読みをローマ字で表記することは少なくないこと、氏名を英語で表記する場合は通常「名」「氏」の順で表記することが社会一般に行われていることからすれば、ブランド名等を表すといった使用の目的にかかわらず、名と氏の間にスペースを設けずに小文字のローマ字で表記したとしても、人の氏名として客観的に把握されて、氏名をローマ字で表記したものと認識されるとみるのが自然であり、加えて、このように表記することにより、氏名とは認識させないといった特別な事情は見いだせない。

そうすると、本願商標のような構成態様が、特異な表記手法であるとはいえず、本願商標に接する取引者、需要者をして、「kojifujita」の文字を、「フジタ・コウジ」を読みとする氏名を「名」「氏」の順にローマ字表記したものと容易に認識するものと判断するのが相当である。

したがって、本願商標は、「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)」(商標法4条1項8号)に該当する。

コメント

商標法第4条第1項第8号の趣旨は、人(法人等の団体を含む。以下同じ。)の肖像、氏名、名称等に対する人格的利益を保護すること、すなわち、自らの承諾なしにその氏名、名称等を商標に使われることがないという利益を保護することにある(最高裁平成15年(行ヒ)第265号同16年6月8日第三小法廷判決、最高裁平成16年(行ヒ)第343号同17年7月22日第二小法廷判決)。

かつては出願人が有名人で、同姓同名の他人が無名である場合、人格的利益を毀損するおそれはないとして登録を認める審決もあったが、人格的利益の保護においては、出願人と他人との間で事業内容が競合するかとか、いずれが著名あるいは周知であるといったことは、考慮する必要がないとして、これを否定する判決が相次いだことから、特許庁においても厳格に適用されるようになり、同性同名の他人が実在する限り、その他人の承諾なく登録が認められる余地はほぼなくなった。

としても、比較的最近まで「MASASHIYAMAGUCHI」(不服2015-15023)、「junhashimoto」(不服2014-16939)のように欧文字の間にスペースを設けることなく一連に表されたものについては、いずれの部分をもって「氏」又は「名」を表したものと把握、認識させるとはいい難く、その構成全体をもって、一種の造語を表したものとみるのが自然であるとして登録が認められていた。本件で拒絶されたのは、近時、例えばドメイン名等で氏名が一連に表示される場合が増加しているという背景があるのかもしれない。

また、「横沢卓也」(不服2017-5040)は、全国の「ハローページ」に掲載されている事実はなく、同氏名を有する実在の他人を特定し得る事実は発見できなかったとして登録が認められている。

したがって、特異な綴りや表記にすれば、登録の可能性が高くなると思われる。