商標審決レポート(サロンパス)
2020年5月12日
弁理士 木村達矢
審判番号 | 不服2019-8030(商願2017-116948) |
立体商標について商標法3条2項の使用による自他商品の識別力が認められて登録された事案 | |
審決/判決 | 審決 |
審決日 |
2020年2月10日 |
出願人 | 久光製薬株式会社 |
商標 |
本願商標 使用商標 位置商標(登録第6142243号商標) |
指定商品 | 第5類 貼付剤 |
審決の内容 | 請求人は、2015年以降、継続して本願の指定商品である「貼付剤」に、本願商標の立体的形状と同一と認められる商標を使用しているものであり、テレビコマーシャル、新聞等を通じて宣伝広告され、かつ、全国的に販売され、一定程度の売上、市場占有率を有するといえることからすれば、相当程度、需要者の間に広く知られたものとなっていることが認められるものである。 そうすると、本願商標は、その指定商品について、請求人により4年以上にわたり継続的に使用された結果、需要者が、請求人の業務に係る商品を表示する商標として認識されるに至ったものとみるのが相当である。 |
コメント |
原査定は、本願商標を構成する立体的形状は、ありふれた形状の一つである直方体であり、包装容器として多数採択され、また、商品の包装容器に色彩を用いた装飾的又は背景的図形を施して使用することは、一般的に行われているから、取引者、需要者は、その指定商品の包装容器の一形態を表したものと理解、認識するにとどまることから、本願商標は、自他商品の識別力を有さないと商標法3条1項3号に該当するとして拒絶。 審決では、3条1項3号該当性は肯定しつつ、商標法3条2項の使用による自他商品の識別力を認めた。 本件では、4年以上の使用で周知性が認められている。最近では売上規模や宣伝量によっては3~4年程度の使用でも周知性が認められる傾向にある。本件は、包装容器の形状であり、商品の形状そのものではないことや、比較的複雑な図形と色彩の組み合わせからなること、さらに「サロンパス」が著名ブランドである点が考慮され、比較的緩やかに判断されたのかもしれない。また、実際の使用商標は、多数の他の文字商標と組み合わせて使用されているが、色彩部分のみで独立して識別力を有するに至っていると判断されたものと考えられる。 さらに、本願の正面上部の図形が位置商標として、本件より先に周知性が認められて登録されており、このことも有利に影響したのかもしれない。 |