限定公開【判例研究】令和5年3月27日判決言渡 令和4年(行ケ)第10009号 特許取消決定取消請求事件(ガス系消火設備事件)
2024年1月25日掲載
弁理士 荒井保亮
1.はじめに
今回は、令和4年(行ケ)第10009号特許取消決定取消請求事件から、進歩性判断について、裁判所が判示した内容をご紹介します。
2.事件の経過
平成27年4月27日 特許出願
令和2年3月11日 特許権の設定登録(特許第6674704号)
令和2年9月29日 特許異議の申立て(異議2020-700740号事件)
令和3年1月7日 取消理由通知
令和3年3月11日 訂正請求 (請求項1を訂正し、請求項2を削除)
令和3年6月30日 取消理由通知(決定の予告)
令和3年9月2日 訂正請求 (請求項1を訂正し、請求項2を削除)
令和3年12月21日 取消決定
令和4年2月1日 本件決定の取消しを求める本件訴訟を提起
3.本件発明の概要
発明の名称「ガス系消火設備」
【請求項1】
建物内でのダクトおよび配管を細くすることで施工コストを低下させ、かつ、
設計の自由度を高めたガス系消火設備であって、
消火剤ガスが貯蔵された複数の容器と、
複数の前記容器内の消火剤ガスを、電子機器が設けられており消火のために水を用いることができない、前記建物に設けられる部屋である防護区画へ導入する前記配管により構成される導入手段と、
消火剤ガスが導入される前記防護区画の側面を貫通するように前記側面に接続されて
前記防護区画から消火剤ガスを排出するための、前記建物内で縦および/または横方向に延びるダクトと、
前記防護区画の避圧口で前記ダクトの端部に設けられたダンパとを備え、
前記ダンパが開閉することで前記ダクトと前記防護区画とが連通および遮断され、
複数の前記容器のうちの一つの容器と別の容器との容器弁の開弁時期をずらして、
前記一つの容器と前記別の容器とから放出される消火剤ガスのピーク圧力が重なることを防止して前記防護区画へ消火剤ガスが導入され、
前記一つの容器の容器弁の第一の開弁タイミングと、前記別の容器の容器弁の第二の開弁タイミングであって前記第一の開弁タイミングとは異なり消火剤ガスのピーク圧力が重なることを防止する前記第二の開弁タイミングとを決定し、前記各容器弁に接続される制御部をさらに備える、ガス系消火設備。
本件発明は、消火剤ガスが貯蔵された複数の容器のうちの一つの容器と別の容器との開弁時期をずらして防護区画へ消火剤ガスが導入されることで、消火剤ガスのピーク圧力が重なることを防止できるため、最大圧力を小さくすることができるという設備です。
これによって、避圧口及びダクトの小型化、配管を細くするといったことが可能となっています。
4.甲1の概要
甲1「不活性ガス消火設備設計・工事基準書〔第2版〕」
一般社団法人 日本消火装置工業会、平成25年5月
異議決定では、本件発明と甲1との一致点及び相違点について、以下のように認定しています。
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