限定公開【判例研究】令和5年3月27日判決言渡 令和4年(行ケ)第10029号特許取消決定取消請求事件 「防眩フィルム事件」知財高裁判決|知財レポート/判例研究|弁理士法人オンダ国際特許事務所

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限定公開【判例研究】令和5年3月27日判決言渡 令和4年(行ケ)第10029号特許取消決定取消請求事件 「防眩フィルム事件」知財高裁判決

2023年9月27日掲載
弁理士 押見幸雄

 

1.事件の概要

 令和4年(行ケ)第10029号特許取消決定取消請求事件

 判決年月日:令和5年3月27日

 発明の名称:「防眩フィルム」

 「副引例から特定の数値のみを抜き出して、主引例に組み合わせることはできないと判示された例」

 

2.事件の経過
日付 手続 備考
2017年8月4日 PCT出願 出願人;株式会社ダイセル
2020年6月22日 設定登録 請求項1~4
2021年1月14日 異議申立 異議2021-700030
2021年4月7日 取消理由通知 請求項1~4(進歩性、実施可能要件、サポート要件、明確性要件)
2021年11月15日 訂正請求 原告
2021年11月15日 意見書 原告
2021年12月24日 意見書 異議申立人
2022年3月28日 異議の決定(特許取消) 請求項1~4(進歩性、実施可能要件、サポート要件、明確性要件)
2022年4月27日 出訴 令和4年(行ケ)第10029号
2023年3月27日 判決(異議の決定の取消)  

 本件特許は、異議2021-700030号事件において特許取消になりました。その後、今回紹介する判決により、異議の決定が取り消されました。

 

3.本件特許の内容
(1)請求項1

 「ヘイズ値が60%以上95%以下の範囲の値であり、

 内部ヘイズ値が0.5%以上8.0%以下の範囲の値であり、

 且つ、画素密度が441ppiである有機ELディスプレイの表面に装着した状態において、

8ビット階調表示で且つ平均輝度が170階調のグレースケール画像として画像データが得られるように調整したときの前記ディスプレイの輝度分布の標準偏差が、0以上10以下の値である防眩層を備える、

 防眩フィルム。」

 

(2)本件特許の課題

 「着色しにくく、良好な防眩性を有すると共に、ディスプレイのギラツキを抑制可能な防眩フィルムを提供できる。」(【0017】)

 

(3)本件特許の図1

限定公開【判例研究】令和5年3月27日判決言渡 令和4年(行ケ)第10029号特許取消決定取消請求事件 「防眩フィルム事件」知財高裁判決 | 2023年

 

(4)本件特許の解説

 本件特許は、防眩フィルムに関するものです。防眩フィルムとは、図1に示すように、ディスプレイの表面に装着されて、ディスプレイ表面への外光の映り込みを防止するものです。本件特許では、防眩層のヘイズ値が60%以上95%以下の範囲の値であり、内部ヘイズ値が0.5%以上8.0%以下の範囲の値であると規定しています。ここで、ヘイズ値は、フィルムの透明性に関する指標を意味します。ヘイズ値の値が小さいほど、透明度が高いことを意味します。また、防眩層の内部のヘイズ値を内部ヘイズ値とし、その外側のヘイズ値を外部ヘイズ値とすると、下記のように、内部ヘイズ値と外部ヘイズ値の合計が、ヘイズ値となります。

 (ヘイズ値)=(内部ヘイズ値)+(外部ヘイズ値)

 本件特許では、「内部ヘイズ値が0.5%以上8.0%以下の範囲の値」であることによって、防眩フィルムの着色を抑制しています。また、「ヘイズ値が60%以上95%以下の範囲の値」であることによって、良好な防眩性を得ています。すなわち、本件特許では、内部ヘイズ値を小さな値にすることで着色を抑制しつつ、外部ヘイズ値を大きな値にして、全体のヘイズ値を60%以上95%以下にすることによって、良好な防眩性を得ています。

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