限定公開【判例研究】令和4年3月29日判決言渡 令和2年(ネ)第10057号 特許権侵害差止等請求控訴事件 「トナーカートリッジ事件」知財高裁判決|知財レポート/判例研究|弁理士法人オンダ国際特許事務所

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限定公開【判例研究】令和4年3月29日判決言渡 令和2年(ネ)第10057号 特許権侵害差止等請求控訴事件 「トナーカートリッジ事件」知財高裁判決

2023年5月24日掲載
弁理士 藤井稔也

 

令和4年3月29日判決言渡 令和2年(ネ)第10057号 特許権侵害差止等請求控訴事件
「トナーカートリッジ事件」知財高裁判決(原審・東京地方裁判所平成29年(ワ)第40337号)

上告受理申し立て → 不受理(令和4年11月2日)

 

1.はじめに

 特許権の消尽については、インクタンク事件最高裁判決(最高裁平成19年11月8日判決)があります。この判決では、消尽により特許権の行使が制限される対象製品は、特許権者が我が国において譲渡した特許製品と同一性を有する製品に限られると解すべきであると述べられています。したがって、インクジェットプリンタ用のインクタンクの再生品は、特許製品と同一性を有さないことが多く、製造販売するにあたっては、特許権が消尽しないことから、特許権侵害に注意が必要です。

 一方で、昨今、SDGsが掲げられるなか、様々な分野での再生品(リサイクル品)も多く流通しております。

 今回ご紹介するトナーカートリッジ事件は、複写機、複合機やプリンタなどのオフィス向けの画像機器及びその関連商品の製造、販売などを業とする株式会社Xが原告で、被告Yは、X製プリンタに対応する使用済みのX製トナーカートリッジ製品からそのX製電子部品を取り外し、Y製電子部品に取り換えた上で、トナーを再充填して製造した再生トナーカートリッジ製品を安価に販売するリサイクル事業者です。

限定公開【判例研究】令和4年3月29日判決言渡 令和2年(ネ)第10057号 特許権侵害差止等請求控訴事件 「トナーカートリッジ事件」知財高裁判決 | 2023年

 インクタンク事件最高裁判決に従えば、リサイクル事業者が特許製品と同一性を有さない再生品であるY製トナーカートリッジ製品を製造販売する行為は、特許権侵害になります。ただ、この事件では、特許権の消尽にとどまらず、さらにXがX製トナーカートリッジ製品が備えるX製電子部品の書換制限措置を施すことが、独占禁止法が規制する競争者に対する取引妨害に該当するかどうかが争われました。

 地裁判決では、被告YによるY製トナーカートリッジ製品は、特許発明の技術的範囲に属し、特許製品と同一性を欠くため、特許製品の新たな製造として特許権の消尽は認めませんでした。しかし、XによるX製電子部品の書換制限措置が独占禁止法が規制する取引妨害に該当するため、独占禁止法違反として、権利濫用の抗弁を認めました(令和2年7月22日判決)。つまり、リサイクル事業者が特許権者に勝ちました。

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 これに対して、知財高裁判決では、XによるX製電子部品の書換制限措置は独占禁止法が規制する取引妨害に該当せず、権利濫用の抗弁を認めませんでした。

 つまり、地裁では、リサイクル業者が勝訴し、知財高裁では、反対に、特許権者が勝訴しました。

 令和4年11月2日上告受理申し立てが不受理となり、判決が確定しましたので、今回、知財高裁での控訴審判決をご紹介しようと思います。

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