米国CAFCより、虚偽宣誓におけるフロードの認定基準に関する重要判決が出されました 【商標】
CAFC(米国連邦巡回控訴裁判所)が、Medinol事件におけるTTAB(米国特許商標庁商標審判部)のフロード(Fraud、詐欺、欺瞞)の基準を覆す判決を出しました(In re Bose Corp. Fed. Cir. Aug. 31, 2009)。
2007年のBose Corp. v. Hexawave, Inc.事件(88 USPQ2d 1332 (T.T.A.B. 2007))では、Bose社が商標更新時に、一部の指定商品についての製造販売を中止ていたにもかかわらず、第8条の使用宣誓書で使用している旨述べつつ更新手続を行なったことがフロードに該当するとして、TTABにおいて登録を取り消すとの審決が下されました。この審決を不服とするBose社はCAFCに控訴し、CAFCの判決で は、「特許商標庁を欺く意図をもって出願人又は商標権者が知りながら虚偽の重大な表示を行なった場合にのみ」フロードにより商標登録が取り消されるとし、被告は、商標権者が更新手続の際、特許商標庁を欺く意図があったことを示す明確で説得力のある証拠によりフロードの主張を立証していないとして、その審決を覆しました。
従前のMedinol事件(Medinol, Inc. v. Neuro Vasx Inc., 67 U.S.P.Q.2d 1205(T.T.A.B.2003))やその後のTTABの審決では、商標権者が実際には使用をしていないにもかかわらず、第8条の使用宣誓書においてその商品又は役務について商標の使用をしているという記載があれば、フロードを行なう意図の特定及び証明を要することなく、フロードによって登録全体が取り消される決定がなされました。
このBose判決以後は、単なる不注意で不使用商品・役務が更新時又は使用宣誓書提出時に含まれていたとしても、特許商標庁を欺く意図があったことが明確で説得力のある証拠により立証されなければ、不使用の商品・役務を削除しなければならないとしても、直ちに登録がフロードにより取り消されることはなくなるようです。
商標権者にとっては、米国で不意に商標登録が取消しになるリスクが減ったという点で、歓迎すべき判決であるといえます。ただし、使用主義を前提とする米国の商標制度の下では、更新時又は使用宣誓書提出時等に使用していない指定商品・役務を含めたまま手続をすることは、望ましい対応ではありません。米国での登録商標の管理については、適時、全ての指定商品・役務の使用の有無のチェックが不可欠といえるでしょう。