地方裁判所は、GRUYERE(グリュイエール)がチーズの一種の普通名称であるとのTTAB(アメリカ特許商標庁商標審判部)の審決を支持
2022年1月17日
米国特許弁護士 マイケル・ピストリオ
Interprofession du Gruyèreetal (グリュイエール同業会)V. U.S. Dairy Export Council (アメリカ乳製品輸出協会) et al, 民事訴訟 No. 1:20-cv-1174(E.D V 2021年12月15日)
2021年12月15日、バージニア州東部地区地方裁判所は、米国においてGRUYEREの語は普通名称化により自他商品の識別力を喪失するに至っていると認定し、証明商標として登録することはできないとのTTAB審決を支持しました。
Interprofession du Gruyère(グリュイエール同業会)は、その構成員の生産するチーズがスイスとフランスのGruyère地域に由来することを認証する証明商標としてGRUYEREを登録するための商標登録出願を行ったところ、Dairy Export Council (アメリカ乳製品輸出協会)は、米国の需要者はGRUYEREの語をいずれの産地であるかを問わずある種のチーズの名称として理解するとして異議申立てを行い、この申立ては認容されました。
Interprofession du Gruyèreha(グリュイエール同業会)は、アメリカ商標法15USC§1071(b)に基づいて地方裁判所にこの決定の取消を求めて民事訴訟を提起し、Dairy Export Council (アメリカ乳製品輸出協会)が略式判決を請求したものです。
地方裁判所は、改めてGRUYEREの普通名称化を検討したうえでTTABの決定を支持しました。判決では、GRUYEREが欧州連合で証明商標として登録されており、米国でも過去において自他商品識別力を有していた可能性があったとしても、膨大な量の証拠は、GRUYEREと表示されたチーズが、GRUYERE地域以外で生産された商品が輸入され、又は、長年にわたり米国国内で生産及び販売されてきたことを示していると適示しました。
殊に、原告構成員の一人が米国で生産されたチーズについてGRUYEREの表示のもとで販売することを許可していたことが考慮されたように思われます。
なお、Interprofession du Gruyère(グリュイエール同業会)は普通名称化していないことを立証するため一般人の認識の調査を提出しなかったことに留意してください。必須とはいえませんが、一般人の認識の調査は、商標が普通名称化していないことを立証する上で裁判所に対して非常に説得力を有します。本件で、裁判所は、グリュイエールチーズを特定するFDA(アメリカ食品医薬品局)の基準には地理的な由来が含まれていないこと、辞書の定義、メディア報道、業界慣行などの証拠に基づいて、GRUYEREの語が普通名称として使用されていると認定しました。