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米国の商標制度

基本情報

商標とは、any word, name, symbol, or device, or any combination thereofと極めて広汎に定義しており、自己の商品・サービスと他人のそれと識別することができるものであれば、文字、図形、記号、立体形状に限らず、音、色、匂い、それらの全体のイメージともいうべきトレードドレスといったようにあらゆるものが登録可能です。また、団体商標、証明商標の登録が可能です。

国際条約

パリ条約(優先権証明書取り寄せ不要)、マドリッド協定議定書に加盟していますので、日本出願を基礎とした優先権主張は可能であり、国際商標登録出願も可能です。

権利付与の原則

商標の使用によって権利が発生する「使用主義」に基づく制度です。同時に、連邦法による登録制度を利用することも可能であり、「使用主義」と「登録主義」を併用しています。

実体審査

(絶対的登録要件)
出願人の商品・サービスを他人の商品・サービスとから識別し得ることが必要です。商品・サービスの品質や機能等を表すにすぎないもの、又は、品質誤認を生ずるものは登録されません。

(相対的登録要件)
他人の先願登録商標と混同を生ずるおそれがある程類似する商標は登録されません。他人が既に使用している商標と混同を生ずるおそれがある程類似する商標も登録されません。使用に基づく出願では、商標を州際又は国際取引において最初に使用した日、使用された商品・サービス、商標見本等を含むことが必要です。また、使用意図に基づく出願では、一定期間(登録査定から最大3年)の間に使用開始した事実を示す使用供述書の提出がなければ、登録は拒絶されます。

出願必要書類

現地委任状が必要です。

更新時の使用証拠の提出有無

必要です。また、登録から5年目~6年目にも使用証拠の提出が必要です。

その他

弊所の経験上、他国よりもより具体的な(例えば、商品の用途等で限定した)指定商品役務の記載とするように求めるオフィスアクションが出される可能性が高い傾向にあります。そのため、米国特許商標庁(USPTO)のウェブサイトで認容され得る指定商品役務の記載の確認が可能ですが、出願前の現地代理人への指定商品役務の確認を推奨いたします。

しかしながら弊所の経験上、現地代理人に確認済の指定商品役務の記載であっても、一般的ではない商品や役務を指定する場合には、当該記載の修正を要求するオフィスアクションを受ける可能性が高いといえます。

「アメリカ国内市場での使用開始済として」、「これからアメリカで商標を使用する(使用意思有)として」、「出願人の本国での商標登録の存在及び当該本国を含む世界のどこかかつアメリカでの使用開始済として」のいずれかの理由で出願する必要があります。
手続きの際に出願人のメールアドレスを提供する必要があります。

 

「使用主義」の米国で登録制度を利用する理由

商標登録により権利が発生する「登録主義」に基づく法体系を採用する他国とは異なる制度を米国は採用しています。すなわち、米国内での商標の使用によって権利が発生する「使用主義」に基づく法体系を採用しています。そのため、米国内で既に使用を開始している商標については連邦法による登録制度を利用せずとも問題ないと判断されるかもしれません。

しかし、当該登録制度を利用して商標を登録しておけば、他人が後から出願した同一または類似の商標の登録を審査官が拒絶し易くなるメリットを享受できます。さらに、いわゆる(r)マークを登録商標に付すことによって税関での差止や商標権侵害に対する権利行使等が容易になるメリット等も享受できます。

また、出願時に何人も使用していない商標については、使用意思に基づく上記登録制度を利用して優先的な地位、すなわち出願後に出願商標と同一または類似の商標を米国内で使用した者に対する優先的な地位を確保しておく必要があります。

なお、使用意思に基づく出願で登録査定を得た場合は、米国内での使用がなければ登録証が発行されないことに留意が必要です。ちなみにいわゆるマドプロ出願では保護認容(登録査定)後に即登録証が発行されるものの、保護認容後5年目から6年目の間に米国内での使用を証明できなければ商標登録を維持できないことにも留意が必要です。

これらの留意すべき点は、いずれも上記登録制度を「使用主義」に基づいて修正するための規定と言えます。

カナダの商標制度

基本情報

2019年06月17日の改正により、商標の使用開始日や使用宣誓は要求されなくなったほか、ホログラム商標、動き商標、音商標、匂い商標、味商標、触覚商標等、出所表示機能を有するものであればおよそあらゆるものが保護対象となりました。

国際条約

パリ条約(優先権証明書取り寄せ不要)、マドリッド協定議定書に加盟していますので、日本出願を基礎とした優先権主張及び国際商標登録出願が可能です。

権利付与の原則

日本と同様、先願主義(最先の出願人に権利を付与する制度)が採用されています。

実体審査

(絶対的登録要件)
他人の商品・サービスと出所の識別ができるものであることが必要です。

(相対的登録要件)
他人の先願登録商標と混同を生ずるおそれのある商標は登録されません。

出願必要書類

ありません。

更新時の使用証拠の提出有無

不要です。

その他

「カナダ国内市場での使用開始済として」、「これからカナダで商標を使用する(使用意思有)として」、「出願人の本国での商標登録の存在及び当該本国を含む世界のどこかでの使用開始済として」のいずれかの理由で出願する必要がなくなりました。登録時や更新時等に使用宣誓書を提出する必要もなくなりました。

なお、これまでの使用宣誓では、金銭的やりとりがなければ商標を使用していないと判断されていました。すなわち、展示会の出展品に商標を付しただけでは当該商標を使用したとは認められませんでした。そのため、不使用取消回避には、この点に留意した使用証拠の収集が求められると考えられます。

また、カナダ弁護士会規則により、マネーロンダリング等の不正行為防止の観点から出願人の詳細な情報の提供が必要です。当該情報は、出願人の「電話番号」、「登記上の会社法人番号等」、「担当者名(役職、連絡先(電話番号/メールアドレス))」です。

メキシコの商標制度

基本情報

商標とは、識別性を有する標識であり、文字、図形、記号、色彩、立体、形状、動態、ホログラム、音声等、またはその組合せにより構成されるものです。識別性とは、商品または役務の関連消費者に、商品または役務の出所を認識させ、自他商品または役務の区別できるものです。2018年の商標法改正によって、音の商標、匂いの商標、ホログラム等の非伝統的商標およびトレードドレスについても、商標登録が可能になりました。
メキシコでは一商標多区分制を採用していないので、一出願一商標一区分でなければなりません。

国際条約

パリ条約、マドリッド協定議定書に加盟していますので、日本出願を基礎とした優先権主張及び国際商標登録出願が可能です。

権利付与の原則

日本と同様、先願主義(最先の出願人に権利を付与する制度)が採用されています。

実体審査

(絶対的登録要件)
商標がその商品または役務の品質、原材料、効能、用途、数量等を表す記述的語句または一般名称である場合や特定の商品の製造と関連する地理的表示または地名を含んでいる場合は登録されません。

ただし、多くの拒絶理由は、先行する類似商標(同一または密接に関連した商品または役務をカバーしている商標)の登録または出願による混同の虞に基づくものである。

(相対的登録要件)
先行する他人の登録商標と混同のおそれがある場合は登録されません。

出願必要書類

場合により、現地委任状が必要です。

更新時の使用証拠の提出有無

必要です。また、登録から3年~3年3か月にも使用証拠の提出が必要です。

その他

メキシコ市場で使用開始済の商標を出願する場合は、当該商標をメキシコ国内で使用した最初の年月日を願書に記載することになります。ただし、当該年月日を証明可能な使用証拠がなければ、これからメキシコで商標を使用する(使用意思有)として出願することになります。
登録日から3年目及び更新時に使用宣誓書の提出が必要です。

ブラジルの商標制度

基本情報

商標とは、文字や図形などにより表示される視覚的に認識可能な標章であり、音や匂いを商標として登録することはできません。通常の商標のほか、証明商標、団体商標の登録ができます。
ブラジルでは一商標多区分制を採用していないので、一出願一商標一区分でなければなりません。
ブラジルでは、付与前異議申立制度を採用しており、商標の出願は、方式審査の後、産業財産公報において公開され、何人も公開日から60日以内に異議申立書を提出することができますが、ブラジル産業財産庁は異議申立て及びこれに対する答弁書提出の有無にかかわらず、実体審査を行います。

国際条約

パリ条約、マドリッド協定議定書に加盟していますので、日本出願を基礎とした優先権主張や国際商標登録出願が可能です。ただし、国際商標登録出願については、ブラジルにおいてマドリッド協定議定書の効力が発生した2019年10月2日より前の国際登録をもとに事後指定をすることはできません。また、ブラジルは個別手数料の二段階納付制をとっているため、国際登録の保護が認容された後、個別手数料の第二段階部分(登録料相当分)を納付する必要があります。

権利付与の原則

日本と同様、先願主義(最先の出願人に権利を付与する制度)が採用されています。

実体審査

(絶対的登録要件)
識別性を有するものであることが必要です。

(相対的登録要件)
先行する他人の登録商標に類似する商標は、登録を受けることができません。

出願必要書類

現地委任状が必要です。

更新時の使用証拠の提出有無

不要です。

その他

第三者からの異議申立の理由を広く集めるとして、審査開始前に出願が公開されます。異議申立がなければ、商標局が出願の審査に着手します。
マドプロ出願の場合も同様です。ただし、異議申立されたとしても商標局はそのことをWIPOに通知しません。そのため、異議申立の有無を察知するために、マドプロ出願の出願人は出願から遅滞なく現地代理人に出願の進捗のウォッチングを依頼する必要があります。