その2 商標権は何によって発生するのか? (登録主義と使用主義)
2008.2.21
商標権は商標登録により発生すると考えられている国と、商標の使用により発生すると考えられている国があります。前者を登録主義といい、最も早く商標出願・登録した者が保護されます。後者は使用主義といい、最も早く商標を使用した者が保護されます。使用主義を採用している国としてよく知られるのはアメリカですが、ほとんどの国で登録主義が採用されています。登録主義を基調として、どこまで使用主義的な制度を導入するかについては世界各国で差があります。
アメリカでは、商標を実際の商取引で最初に使用することによって商標権が発生します。連邦商標登録を取得していれば様々なメリットはありますが、登録の事実からは有効な商標権があると推定されるにすぎません。最先使用の事実に基づいて、使用しているエリアやその周辺エリアにおいて、他人による紛らわしい商標の使用を阻止することができ、また他人の連邦商標登録取得を阻止するための異議申立てや、登録後5年以内であれば他人の登録の取消請求も可能です。このような考え方は、最初に商標を使用した者に権利を認めてきた裁判所の判決の蓄積によって確立したルール(コモンロー上の商標権)に基づくもので、米国ではこれが最重要視されています。
イギリスはじめ、オーストラリア、マレーシア等のかつてイギリスの影響を強く受けていた国では、アメリカと同様のコモンローが法体系の基礎をなしています。商標については登録主義を採用しているため、商標権の発生は商標登録によりますが、商標の使用によって発生するコモンロー上の権利も重視する傾向にあります。先使用者は、その使用開始日より後に出願された第三者の商標出願・登録に対して異議を申立てたり、取消し・無効を請求したりすることができます。また、パッシングオフ(詐称通用)に対する訴訟が提起できます。
同じ登録主義国でも、例えばイタリア、台湾などでは、未登録であっても他人の出願又は登録よりも先に商標を善意で使用している場合にはその範囲内で継続使用が認められる場合があり、ドイツ、日本、韓国などでは、そのような先の使用が周知になっていることを条件に継続使用が認められる場合があります。その一方で、登録主義をより厳格に採用する中国など、先に使用していて周知になっていた場合でも、商標登録がなければ保護が受けられない国もあります。
このように商標権の発生は国によって異なりますので、保護を求める国の制度を知っておく必要があります。使用に基づく権利が認められる国においても、商標登録を取得することで得られるメリットには非常に大きなものがあります。次回、その3では、商標登録を取得することのメリットについて考えてみたいと思います。
