外国商標事始め
外国商標事始め

その1 商標権はどこまで及ぶ? (権利の及ぶ地理的範囲)

2008.1.21

商標の保護は、世界各国独自の商標制度の下、様々な方法で行われています。日本において商標を保護するには、日本国特許庁に商標登録出願をし、商標登録を受けることになりますが、その商標登録により発生した商標権の地理的範囲は日本国内に限られます。外国で商標を保護するには、保護を求める国の商標制度に合致した方法で、それぞれの国で商標権を発生させる必要があるのです。

例外的に一つの商標登録の効果、すなわち商標権が複数国に及ぶ例として、欧州連合の加盟国27カ国全域に商標権が及ぶCTM(欧州共同体商標)や、オランダ・ベルギー・ルクセンブルグのいわゆるベネルクス3国に商標権が及ぶベネルクス商標などがあります。

また、ボリビア・コロンビア・エクアドル・ペルーで構成されるアンデス共同体では、商標出願・登録は各国で行いますが、ある国の登録を他の国の出願に対する異議申し立ての基礎とすることができます。これも商標権が複数国に及ぶ一例と言えるでしょう。

アフリカには英語圏諸国16カ国が加盟するARIPO(アフリカ地域工業所有権機構)、仏語圏諸国16カ国が加盟するOAPI(アフリカ知的所有権機関)があり、CTMのように商標権を広域で保護するための協定がそれぞれ採択されています。

しかし、ARIPOの加盟国中、その協定に批准しているのは8カ国(ボツワナ、レソト、マラウィ、ナミビア、スワジランド、タンザニア、ウガンダ、ジンバブエ)に過ぎず、しかも、ボツワナを除いて、どの国も批准のための国内法改正がなされていない状態です。これら批准国の国内法改正までは、各国個別に出願・登録をするしかないでしょう。

一方、OAPIは制度整備が一段落し、現在はうまく機能しているようです。各国個別に出願・登録をすることはできず、加盟国のいずれかに出願しても、その保護範囲は加盟国16カ国(カメルーン、セネガル、コートジボワール、マリ、ベナン、トーゴ、ニジェール、ブルキナファソ、コンゴ、中央アフリカ、赤道ギニア、ギニア共和国、ギニアビサウ、チャド、ガボン、モーリタニア)に直ちに拡張されます。

残念ながら、身近なアジア圏ではそのような広域条約は現在ありません。ASEAN諸国での統一商標制度も検討されているようですが、実現の目途はたっていません。特殊な例として、同じ中国であっても、香港、マカオでは古くから独自の商標制度を有しており、中国に返還後もそれが維持されています。香港、マカオで商標権を取得したい場合は香港、マカオにそれぞれ商標登録出願をして登録を取得する必要があります。

次回、その2では商標権は何によって発生するのか、外国での代表的な考え方について考えてみたいと思います。