商標について
ECと商標権
  1. 我が国の商標事情
  2. e-commerceに関する商標の商品区分
  3. e-commerceと商標の態様
  4. ドメイン名と商標登録の関係
  5. e-commerceに関する商標の出願対象国

1.我が国の商標事情

我が国では、一昨年のプライスラインの逆オークション特許やアマゾン・ドット・コムのワンクリック特許の成立を契機として、ビジネスモデル特許(米国では、Buisiness Method Patentと称されるもの)の出願が急増している。日本国特許庁のデータによれば、ビジネスモデル特許の出願は1998年で約2400件、1999年で約3150件であったのが、2000年には約1万5千件に上るとされている。インターネットビジネスの急進に伴い、IT関連の大企業に留まらず、ベンチャー企業や今まで特許に無縁と言われていた金融・保険業界、非製造業にまで余波が及び、出願のすそ野が広がっている。もっとも、金融業界の場合は、単に日本特有の護送船団方式に守られていたが故に、本来必要であるべき関心が寄せられていなかったに過ぎないというべきであろうが。

そして、このビジネスモデル特許やインターネットビジネスの急増は、商標出願にも大きく影響を及ぼしている。特に、その影響は、国際分類第35〜42類のサービスマークの分野に顕著に現われている。下表1は、1992.4.1〜1999年迄の分類別商標出願件数の推移を示す。なお、1992年は、我が国でサービスマークの登録制度が導入された年で、使用に基づく出願(優先的に登録が認められた)が集中している。1993年以降は、3〜4,000件/年ずつ出願件数が増加しているが、1999年には、一挙に1万件の出願増となっている。2000年のデータは未だ公表されていないが、おそらく前年比約50%の増加になるだろうと言われている。商品に関する1〜34の区分の年間出願件数が、約13万件前後で横ばい気味に推移しているのに比べても、サービスマーク関連の商標出願が急増していることが判る。

表1:1992.4.1〜1999の分類別商標出願件数推移(日本国特許庁の公表データより)

分類等
類別名称
出願件数
出願区分数
   
1992年
1993年
1994年
1995年
1996年
1997年
1998年
1999年
1〜34
の合計
 
45,801
115,978
115,468
116,858
123,729
135,575
122,267
131,236
35 広告
7,186
1,318
1,582
1,968
2,500
2,833
2,945
5,120
36 金融,保険,不動産
16,438
1,635
1,970
2,466
2,868
3,302
3,543
4,791
37 建設,設置工事
13,480
2,203
2,252
2,635
2,831
3,557
3,159
3,676
38 電気通信
4,039
770
1,030
1,728
2,769
2,828
2,418
3,908
39 輸送
8,804
970
954
1,042
1,155
1,512
1,293
1,686
40 加工処理
6,432
492
646
623
752
1,255
910
1,032
41 教育,娯楽
14,566
3,076
3,147
3,624
4,186
4,835
4,840
6,007
42 飲食物・宿泊施設の提供
27,358
5,113
5,400
6,184
7,370
8,696
8,679
11,997
35〜42
の合計
 
98,303
15,577
16,981
20,270
24,431
28,818
27,787
38,217
  その他
0
374
201
86
90
56
0
0
1〜42
の合計
 
144,104
131,929
132,650
137,214
148,250
164,449
150,054
169,453

注1:1997年以降は、1997年4月から一出願多区分制度を導入したことにより、出願区分数とした。
注2:「その他」は、平成3年法律第65号による改正前の商標法の適用を受ける出願及び類の記載がなく出願されたものである。
注3:1992年の出願件数は、4月1日以降の出願であって商標課において接受したものである。
注4:この表における「類」は、改正商標法(平成3年法律第65号)に基づくニース国際分類である。

2.e-commerceに関する商標の商品区分

インターネットを介して提供されるe−commerceでは、提供する商品やサービスの内容・形態が多岐にわたる。そのため、登録を受けなければならない分類が複数にまたがる可能性が高く注意を要する。ちなみに、下表2は、e−commerceに関連する分類とその指定商品・サービスの記載例と、当該分類における登録例を一部紹介したものである。 ご承知のように、我が国も1992年から商標に関する国際分類を採用しているので、分類の概念は概ね諸外国と近い考え方で運用されている。とはいうものの若干相違する点も存在するので、注意を要する。例えば「情報の提供」という役務は、提供される情報の内容によって分類が分かれている。また、日本は米国等と異なり、デパートメントストアやコンビニエンスショップなどの小売業を役務(国際分類第35類)で登録することは認めていない。基本的にこれらの小売業は、出願人が販売する商品が属する分野で登録を受けることを要する。

従って、出願に際しては、特許庁の電子図書館の商品・役務リストを参照し、該当する記載が見当たらなければ、商品・サービスの仮称を記載すると共に、当該商品等についての説明書を提出されると良い。また、日本国の弁理士に対し分類や商品・サービスの適切な表現についてアドバイスを求められるとより確実であろう。

また、上述したように、近年サービスに関連する分類(第35〜42類)への商標出願が急増している。従って、商標出願はもとより使用開始にあたっては、先の出願・登録の有無の事前調査をされることをお勧めする。

なお、我が国における最新の法改正の動向として、ネット上のソフトの保護を巡っての特許法と商標法の改正の予定がある。ネット上におけるソフトの特許権侵害行為の明確化に加えて、「ネット上などから取出すこと(ダウンロード)が可能な電算機ソフトウェア」を商標登録の対象とする法改正であり、2002年の通常国会に提出されると言われている(2001年4月14日付け日本経済新聞朝刊より)。

表2:日本におけるe-commerce関連の商標分類/商品・サービス/出願・登録の事例
(なお、指定商品等の記載はあくまで例示であり、この記載が全て認められるわけではない)

国際分類
指定商品又は役務
左記分類における出願・登録例
第9類
電子応用機械器具及びその部品(プログラムやソフト) 「AMAZON.COM」(アマゾン ドット コム)
「i-mode/アイモード」(NTT移動通信網)
「COMPAQ」(コンパック)
第16類
ソフトに関する手引書 「e-shop/イーショップ」(千趣会)
「COMPAQ」(コンパック)…旧日本分類で
第35類
電子商取引に関する情報の提供
インターネットのホームページを利用した広告
インターネット上で行う競売の運営その他の競売の運営
商品の販売に関する助言
「MAPION/マピオン」(凸版印刷)
「i-mode/アイモード゙」(NTT移動通信網)
「COMPAQ」(コンパック)
第36類
株式市況・金融市況・外国為替市況・金融市場に関する情報の提供その他の金融情報の提供 「MAPION/マピオン」(凸版印刷)
「パーフェクト」(住友銀行)
「PRICELINE」(プライスライン コム)
「HUB AND SPOKE」(Signature Financial Group Inc.)
「i-mode/アイモード゙」(NTT移動通信網)
第37類
電子計算機の修理又は保守 「COMPAQ」(コンパック)
第38類
電子計算機端末による通信
プロバイダー電子計算機端末による通信ネットワークへの接続の提供
「MAPION/マピオン」(凸版印刷)
「i-mode/アイモード」(NTT移動通信網)
「TIGER.CO.JP」(タイガー魔法瓶)
「COMPAQ」(コンパック)
第39類
旅行(宿泊に関するものを除く。)に関する情報の提供 「PRICELINE」(プライスライン コム)
「i-mode/アイモード゙」(NTT移動通信網)
第41類
映画・テレビ番組・ビデオ・ゲームなどの娯楽に関する情報の提供
ゲームセンター・スロットマシン場・ぱちんこホール・ビリヤード場・囲碁所・将棋所・マージャン荘・遊園地その他の娯楽施設の提供及びこれに関する情報の提供
「i-mode/アイモード」(NTT移動通信網)
「COMPAQ」(コンパック)
第42類
プログラムの設計・作成又は保守電子計算機プログラムの貸与
インターネットサイトの設計・作成・保守及び改良
宿泊施設に関する情報の提供
レストラン・バー・カフェテリアに関する情報の提供
気象情報の提供
地図情報の提供
「MAPION/マピオン」(凸版印刷)
「PRICELINE」(ブライスライン コム)
「i-mode/アイモード」(NTT移動通信網)
「PIZZA.COM/ピザ ドット コム」(アオキーズ)
「COMPAQ」(コンパック)

3.e-commerceと商標の態様

また、インターネットによるe−commerceの急進は、出願される商標の態様にも、大きく影響を及ぼしている。例えば、下表3を参照されたい。このように、URLそのものや、通信プロトコル(http)やウェブ(www)の部分を除いた主要なドメイン名(〜.com、〜.co.jp)が出願・登録されている。また、インターネットビジネスに多用される記号i,e,@,netを付した態様の商標も、大量に出願・登録されている。

表3:e−commerceと商標の態様について(第35類〜第42類)

商標の態様
出願・登録例
〜.com AMAZON.COM,PRICELINE.COM,kabu.com,イーケンセツ・コム\eーkensetsu.com,WARNER’S.COM,ウェブロジスティックドットコム\WebーLogistic.com,TAKA:Q.COM\タカキュードットコム,情報Study.Com\情報スタディ.コム,ピザドットコム\PIZZA.COM,asahi.Com
e−〜 E−BUSINESS,e−bank\イ−バンク,e−農業,E−CALL\イーコール,E−NEWS\電子新聞,e−Broadcasting,E−Station\イーステーション,e−style\イ−スタイル,e−CINEMA,e−konami\イーコナミ
i−〜 i−mode\アイモード,i−Trade,i−money\アイマネー,i−socket,インターネット中部\i−chubu\(アイチューブ),i−モバイルアクセス,i−Logistics,i−portal\アイポータル,i−studio\アイスタジオ,i−solution
〜@〜 Tm@,@LAWSON,@Loan\アットローン,e−F@ctory,@TV,エーマークツアー∞@TOUR,@office,i@college,@ぴあ,@NAV
〜−net Soーnet,MADORI.NET,イージーネット\ezーnet,綜合警備保障\SKーNET,ジェイネット\JーNET,shoten.net\書店ドットネット,nakata.net\ナカタドットネット,資格ネット\eーshikaku.net,PATENT・NET,日経BPジョブネット\NIKKEIBPJobーNet
www TSUTAYA\Online\www.tsutaya.co.jp,www.soーnet\cafe,§e旅∞www.etabi.co.jp,e∞COMMERCE∞www.gemedical.co.jp,かまぼこジャパン\www.kamabo.co.jp,ピープル\Pmall\www.pmall.ne.jp,WWW.NASCAR.COM∞NASCAR∞ONLINE,www.lawfirm.co.jp,www.eーcity.jp
http http://www.carweb.ne.jp/∞§CARWeb\中古車情報,どこなび\ドットコム∞http://www.doconavi.com,http://www.jra.co.jp/,§http://coo.tiki.co.jp/\飲食店情報″ク〜!″\Coo!,http://sports.tiki.co.jp/\eーSports,http://www.delinavi.com/,http://www.eーseikyu.co.jp,http://www.taito.co.jp/,@∞DO\http://atmarkdo.net,§n∞http://www.nir.co.jp

4.ドメイン名と商標登録の関係

なお、本来インターネット上の住所に過ぎないURLやドメイン名そのものを商標登録することの効果について疑問があるかもしれない。確かに、我が国においても、単にURLとして使用されているだけでは、商標としての使用とは認められず、商標権の効力が及ばないと判断される可能性はある。しかし、商標権者自らはもちろんのこと、第三者もまた、単にURLとしてだけではなく当該ホームページ上で商品やサービスの広告宣伝として商標的に使用することもあり得ることを考えれば、商標登録することも充分意味があるものと考える。  

この点に関し、一つ参考になる判例を紹介する。富山地方裁判所における平成10年(ワ)第323号事件(名古屋高等裁判所に控訴中、通称「JACCS事件」)である。後程、ドメイン名に関する判例として紹介するが、この事件では、ドメイン名が不正競争防止法第2条第1項第1号,2号に規定される「商品等表示」に該当するか否かが争点になった。そして、判決は、本件のドメイン名は、ホームページ中の「JACCS」の表示と共にホームページ中の商品の出所を表示する機能を有するとして各号規定の「商品等表示」に該当すると認定し、被告による「http://www.jaccs.co.jp」というドメイン名の使用と、当該ホームページ上における「JACCS」の表示の使用差止を認めたのである。

法的根拠が異なるとは言うものの、この判断に立てば、ドメイン名と言えどもその使用方法如何によっては、商品等の出所を表示する機能を営む、言い換えれば商標としての機能を発揮し得ると言えるのであり、商標登録することの意義が肯定されよう。

もちろん、判事事項(下線部分)の反対解釈として、当然に単なるURLの表示としてのみの使用に関しては、商標権はもとより不正競争防止法の適用が認められない可能性がある。後程、我が国のドメイン名保護の状況を紹介するが、我が国ではWIPO或いはJPNICの裁定に加えて、ドメイン名の不正登録排除に関して不正競争防止法の改正(注1:改正不正競争防止法は平成13年12月25日より施行されました。)が予定されている。しかし、不正登録を法律上確実に排除することが困難な現状では、法的安定性を有する商標登録も自衛手段の一つとして考えるべきである。

5.e-commerceに関する商標の出願対象国

最後に、インターネットや通信回線を利用して提供されるeビジネスに関しては、ビジネスモデル特許と同様に国境を越えて商品・サービスが提供される可能性を有している。このように、国境を越えて提供される商品・サービスに関して侵害事件等が生じたときは、裁判管轄や準拠法の問題が関係して事態が複雑化することを免れ得ない。  
従って、このような可能性を有するものについては、予め当該国での商標登録も検討する必要がある。